スッタ・ニパータ ( ブッダの言葉 ) より 1
蛇の毒が 体のすみずみに広がるのを薬で制するように、怒りが起こった
のを制する修行者は、この世と かの世とを 共に捨て去る。
ーー 蛇が脱皮して 古い皮を 捨て去るようなものである。
子のある者は 子について憂れい、また牛のある者は牛について憂れう。
実に 人間の憂れいは執著する もとのものである。
執著するもとの もののない人は、憂れうことがない。
四方のどこにでもおもむき、害心あることなく、何でも得たもので満足し、
諸々の苦難に耐えて、恐れることなく、犀 ( サイ ) の角のように
ただ独り歩め。
今の人々は 自分の利益の為に交わりを結び、また他人に奉仕する。
今日 ( こんにち )、利益をめざさない友は得難い。 自分の利益のみを
知る人間は、きたならしい。 犀の角のように ただ独り歩め。
私にとっては、信仰が種である。 苦行が雨である。 知恵が わたしの
軛と鋤である。 はじる事が鋤棒である。 心が 縛る縄である。
気を落ち着ける事が わが鋤先と突く棒とである。
身をつつしみ、言葉をつつしみ、食物を制して過食しない。
わたしは 真実を守る事を草刈りとしている。
柔和が わたくしにとって牛の軛を離すことである。
努力が わが軛をかけた牛であり、安穏の境地に運んでくれる。
しりぞく事なく進み、そこに至ったならば、憂えることがない。
ーー この耕作は このようにしてなされ、甘露の果実をもたらす。
この耕作を行ったならば、あらゆる苦悩から解き放たれる。
栄える人を識別する事は易 ( やす ) く、破滅を識別する事も易い。
理法を愛する人は栄え、理法を嫌う人は 敗 ( やぶ ) れる。
血統を誇り、財産を誇り、また 氏姓を誇っていて、しかも己が親戚を
軽蔑する人がいる。 ーー これは 破滅への門である。
女に溺れ、酒にひたり、賭博に耽り、得るにしたがって 得たものを
その度ごとに失う人がいる。 ーー これは 破滅への門である。
おのが妻に満足せず、遊女に交わり、他人の妻に交わる、
ーー これは 破滅への門である。
村や町を破壊し、包囲し、圧制者として一般に知られる人、( 独裁者 )
ーー かれを賤しい人であると知れ。
自分をほめたたえ、他人を軽蔑し、自らの慢心のために卑しくなった人
ーー かれを賤しい人であると知れ。
あたかも、母が 己が独り子を 命をかけても護るように、そのように
一切の 生きとし生けるものどもに対しても、無量の慈しみの心を起こす
べし。
この世では 信仰が人間の最上の富である。 徳行に篤い事は 安楽を
もたらす。 実に 真実が味の中での美味である。
知恵によって生きるのが 最高の生活であるという。
独り歩み、怠ることのない聖者、非難と賞讃とに心を動かさず、音声に
驚かない獅子のように、網にとらえられない風のように、水に汚されない
蓮のように、他人に導かれることなく、他人を導く人、
ーー 諸々の賢者は、かれを 聖者 であると知る。
