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               シンガーラカ への 教え ( 六方礼経 ー ろっぽうらいきょう )




ある学者は、「 『 シンガーラカへの教え 』、は、すべての人々が 互いに相手を尊重し、敬意によって

 対等の関係で結ばれる社会を実現させる事が ブッダの悲願であった、という事を よく物語っている。
 
 それは、ブッダより二千五百年あまりも後の世に生きる 私たちの悲願でもある。」、 と書いている。



 ある時、ブッダが 竹林精舎に滞在しておられた時のこと。


この街の資産家の息子で、シンガーラカ という男がいた。      ある日の 早朝、シンガーラカは

衣服や 髪を清めてから 合掌し、東方、南方、西方、北方、下方、上方の 六つの方角を礼拝していた。

ブッダはそれを見て、「 どうして汝は 衣や髪を清めて、六方を礼拝しているのか。」、 と問われた。


シンガーラカは、 「 世尊よ。 私の父が亡くなる時、『 汝は 諸方を礼拝せよ 』、と遺言しました。

 そこで私は父の遺言を尊重して、朝早く起きて身を清め、郊外に出て六方を礼拝しているのです。」、

と答えると、ブッダは 六方を礼拝する事の真の意味を 次のように説かれたという。



「  シンガーラカ よ、これが 六方、と知るべきである。

 東方とは 母と父、南方とは 師、西方とは 子と妻、北方とは 友人と朋友、下方とは 下男と使用人、

 上方とは 沙門とバラモンであると知るべきである。

 
 シンガーラカよ、東方として礼拝される父母に対して、子は 五つの仕方で仕えなければならない。

 すなわち、 養育してもらった両親を養い、家業に精を出し、家督を継ぎ、遺産を相続し、

 死者の霊を祀る、という 五つの仕方である。

 シンガーラカよ、子は これらの 五つの仕方で両親に仕える。


 又、両親は 五つの仕方で子を愛する。 

 すなわち、わが子を罪悪から遠ざけ、善を行なわせ、技芸を学ばせ、ふさわしい妻を娶らせ、

 時が来たら 家督をゆずる、という 五つの仕方である。

 このように 子は 五つの仕方で両親に仕え、両親は 五つの仕方で 子を愛するのである。

 こうして東方は完全に守られ、安泰であって何の恐れもなくなるのである。


 
 シンガーラカよ、南方として礼拝される 師に対して、弟子は 五つの仕方で仕えなければならない。

 すなわち、師に 礼をつくし、師のそばにあり、師に従い、給仕し、学問を学ぶ、という 五つの仕方で

 ある。

 シンガーラカよ、弟子は これらの 五つの仕方で師に仕える。


 又、師は 五つの仕方で 弟子を愛する。

 すなわち、正しい指導法で指導し、弟子がよく理解したものを しっかりと保持させ、

 すべての技芸を学ばせ、友人や 朋友の間で誉め、諸方において彼を守る、という 五つの仕方である。

 このように弟子は 五つの仕方で師に仕え、師は 五つの仕方で 弟子を愛するのである。

 このようにして南方は完全に守られ、安泰であって何の恐れもなくなるのである。


 
 シンガーラカよ、西方として礼拝される 妻に対して、夫は 五つの仕方で仕えなければならない。

 すなわち、敬意をもって接し、礼儀をもって扱い、不倫を行なわず、権限を与え、

 身を飾る装身具を用意する、という 五つの仕方である。

 シンガーラカよ、夫は このような 五つの仕方で妻に仕える。


 又、妻は 五つの仕方で夫を愛する。

 すなわち、家事をよくし、使用人たちを親切に扱い、貞操で、家の財産を守り、

 なすべき事を巧みに処理して 怠けることがない、という 五つの仕方である。

 このように夫は 五つの仕方で妻に仕え、妻は五つの仕方で 夫を愛するのである。

 こうして西方は完全に守られ、安泰であって何の恐れもなくなるのである。


 
 シンガーラカよ、北方として礼拝される 友人と朋友に対しては、友として 五つの仕方で奉仕

 しなければならない。

 すなわち、分かち合う事と、やさしい言葉と、友につくす事と、協同する事と、あざむかない事、

 という 五つの仕方である。

 シンガーラカよ、人は このような 五つの仕方で 友人と朋友に奉仕する。


 又、友人と朋友は 五つの仕方で友を愛する。

 すなわち、友が元気のない時に守る、友が無気力な時には 彼の財産を保護する、

 友が恐れている時には 彼の庇護者となる、友が逆境に陥っても彼を捨てない、

 彼の家族 子孫をも尊重する、という 五つの仕方である。

 このように、人は 五つの仕方で友人・朋友に仕え、友人・朋友は 五つの仕方で友を守るのである。

 こうして北方は完全に守られ、安泰であって何の恐れもなくなるのである。



 シンガーラカよ、下方として礼拝される 下男・使用人に対して、主人は 五つの仕方で仕えなければ

 ならない。

 すなわち、その力に応じた仕事を与え、食料と給料を与え、病気の時は いたわって看病し、

 珍味の食物を分け与え、時々休暇を与える、という 五つの仕方である。

 シンガーラカよ、主人はこのような 五つの仕方で下男・使用人に仕える。


 又、下男・使用人は 五つの仕方で主人を愛する。

 すなわち、主人よりも早く起き、遅く就寝し、与えられたものだけを受け取り、仕事を立派にこなし、

 主人の名誉になる事を 人々に話す、という 五つの仕方である。

 このように主人は 五つの仕方で下男や使用人に仕え、下男や使用人は 五つの仕方で主人を愛するので

 ある。

 こうして下方は完全に守られ、安泰であって何の恐れもなくなるのである。



 シンガーラカよ、上方として礼拝される 沙門 ( 修行者、思想家、) とバラモン ( この場合、

  邪悪のない 人格完成者 )、に対して、人は五つの仕方で仕えなければならない。

 すなわち、沙門とバラモンに対して、親切な心と、親切な言葉と、親切な行いと、教えを聞く事と、

 供養物を給与する事によって奉仕する。

 シンガーラカよ、人は このような 五つの仕方で 沙門とバラモンに仕える。

  
 又、沙門とバラモンは、六つの仕方で 人を教導する。

 すなわち、彼らを 悪から遠ざけ、善に入らしめ、善い心で愛し、今だ聞かない事を教え、

 すでに聞いた事柄を正しく説明し、天界への道を 説き示す、という 六つの仕方である。

 このように 人は 五つの仕方で 沙門とバラモンに仕え、沙門とバラモンは 六つの仕方で人を教導

 するのである。

 こうして上方は完全に守られ、安泰であって何の恐れもなくなるのである。 」





( この有名な経典は、後世に中国の僧侶たちが 翻訳に困った、という話がある。 『 妻に仕えよ 』、

 とか、『 下男・使用人に仕えよ 』、と書いてあったからだった。  

 当時の中国は男尊女卑であり、下男とは 中国においても 奴隷だったからである。  

 ブッダの平等の思想が ここに貫かれている。
 
 ブッダは 世間の習慣や迷信を 頭から否定せず、逆にそれを利用して 人々を善導していたのだった。) 

 

 
  


 





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