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                            ウッパラ ヴァンナー




 今を去る、約二千五百年前のインド地方に、ウッパラ ヴァンナー という名の 一人の美女がいた。


漢訳の仏典には、蓮華色 ( れんげしき ー レンゲの花のように美しい人 ) と いう名で 書かれている。

出家後は、ブッダから 女性修行者中では ( 神通第一 ) として賞賛され、尼僧の告白 ( 岩波文庫 ) 

に、彼女の言葉を残している。



ある学者は、「 ウッパラ ヴァンナー という 女性の人生は 実に 悲惨であった。  

 それにもかかわらず、不思議と 本人は明るいのである。   

 悟りを開いた人の心境というのは、このようなものであろうか。」、 と書いている。



ウッパラ ヴァンナーは、裕福な 商人の家に生まれた。    一人娘だったので、婿をもらった。

一人の 女の子が生まれたが、その頃、父親が あえなく病気で亡くなってしまった。

彼女の母親は 淋しさのあまりか、娘の婿と関係をもってしまった。  

ウッパラ ヴァンナーは 侍女から聞いて その事を知り、ショックのあまり 一人で家を出た。

呆然として歩き続け、はるばる旅をして ある都市の城門の前に、汚れた姿のままで たたずんでいた。

そこへ、最近妻を亡くした商人が、淋しさを まぎらわせようと 馬車に乗って出てきた。

商人は ウッパラ ヴァンナーの美しさに眼をとめ、「 あなたの夫は 誰ですか ? 」 と聞いたところ、

「 私に 夫はいません。」、 と 彼女は答えたので、商人は家につれて帰って 妻にした。



ウッパラ ヴァンナーは、かいがいしく夫につかえ、商売も手伝って 商人の家は富栄えた。

ある時、夫は隊商を組んで 商売の旅に出た。    ある都市で商人は、一人の美しい少女を見たので、

その家をたしかめて 少女の親に大金を支払い、隊商にいた 友人たちの反対を押し切って

少女を 妻として もらいうけた。

そして、商人の家の近くに 少女を住まわせ、何くわぬ顔をして一人で家に帰った。 

ウッパラ ヴァンナーは 金が半分足りない事に気づき、夫に聞くと、「 実は 家に帰る途中に 盗賊に

 出会って取られたのだ。 だから今から 皆で取り返しに行くのだ。」、 と 嘘を言って、少女の住む

家に行った。

そのあと 商人の友人がやって来て、「 あいつは どこに行った ? 」、 と聞くので、彼女は訳を

話した。

すると、「 それは嘘だ。 あいつは 女の所へ行ったのだ。」、 と、その友人は しゃべってしまった。



彼女はショックを受けたが 一人でそれに耐えて、夫が帰って来た時に言った。

「 あなた、すべて聞きました。 どうかその子を 家に住まわせてあげて下さい。 妹のような人なら

 妹として、子供のような人なら 私の子供として 共に暮らしたいと思います。」

商人は躊躇したものの、少女を家につれてきて、少女は第二夫人として いっしょに暮らしていた。

しかしある時、ウッパラヴァンナーは、少女の 住んでいた町 その生い立ち、少女の父親の名前を聞き、

この少女が、かつて自分が 以前の家に置いてきた 我が子である事を知った。



「 親子で 夫を共にするとは、私は なんと汚らわしい運命なのだろう。」、 と 愕然として、又しても

彼女は家を出た。 

そして マガダの大都市に行き、「 もう男は 信用できない。」、 と思って遊女として暮らす事にした。

美貌を武器にして、富豪の男たちを手玉にとり、ちやほやされて ぜいたくな暮らしを楽しんでいた。

やがて、ブッダの一行が マガダ国に来た時、 高弟の モッガラーナ が 町に托鉢にやって来た。

その町の男たちは、絶世の美女が勝つか、あの行者が勝つかと思って おもしろがって賭けをした。

歩いていた子供に おこずかいをやって、ウッパラヴァンナーに こう言わせた。

「 ウッパラ ヴァンナーさん。  あなたは あの行者を誘惑して、落とすことが できますか ? 」

それを聞いた ウッパラヴァンナーは、「 私は 今まで、あまたの富豪の男どもを 手玉にとって落として

 きたのです。   あんな者なんか、 何ほどの事があると言うのですか。」、 と言って怒った。

人々は、「 しかし、あの道士は 道心堅固だから、いくら あなたでもどうでしょうか。」

と言って 成り行きを見守った。



プライドを傷つけられたと思った ウッパラ ヴァンナーは、モッガラーナの所に行き、手練手管を

つくして誘惑したが、全く相手にされず、ついには 説教をされてしまった。

その説法で 彼女は眼をさまし、出家して ブッダの弟子として サンガに入った。

そして 熱心に修行を続けて 悟りを開いたのちに、 多くの尼僧を 指導したという。



しかしある夜、ウッパラヴァンナーは、彼女に思いをよせる悪人の男に むりやり犯されてしまう という

いまわしい事件が起こった。

この事件を きっかけにして、この後、ブッダは 尼僧は 夜には 全員を精舎に入れ、護衛の僧をつける

事に決められた。

ウッパラヴァンナーは その後も 林で修行したり、瞑想している時、たびたび 悪い男にねらわれたが、

平然として 受難を恐れず 悪漢を はねつけた時の彼女の言葉が、仏典には残っている。 



彼女は サンガを分裂させようとした デーヴァダッタに 殺害されたと、ある仏典には書いてあるが、

その事の真偽は わからない。 

ウッパラ ヴァンナーは修行完成者として 人々の尊敬を受け、 テーリーガーターに その言葉を残した。



心も美しく、そして いつも明るい人であったという ・・・・・。






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