スッタ ・ ニパータ  ( 5 )




修行者は 心のうちが 平安となれ。    外に 安穏を求めては ならない。

内的に平安となった人には 取り上げられるものは存在しない。 

どうして 捨てられるものがあろうか。



海洋の 奥深いところでは 波が起こらないで、静止しているように、静止して 不動であれ。

修行者は 何ものについても 欲念を もりあがらせては ならない。



古いものを 喜んではならない。    又 新しいものに 魅惑されてはならない。

滅び行くものを 悲しんではならない。    妄執 ( 執着 妄想 ) に とらわれては ならない。



嘘をつくように ひきこまれるな。    美しい姿に 愛着を起こすな。

また 慢心を知り尽くして なくすようにせよ。    粗暴になる事なく、ふるまえ。



聖者は 誠実であれ。       傲慢でなく、 いつわりなく、 悪口を 言わず、 怒ることなく、

よこしまな 貪りと、 ものおしみ とを 超えよ。



過去にあった 煩悩を 枯渇せしめよ。    未来には 汝に 何ものも 有らぬようにせよ。

中間において、汝が 何ものをも 執しないならば、汝は 「 安らかな人 」、 としてふるまうであろう。



苛酷なることなく、貪欲なることなく、動揺して煩悩に悩まされる事なく、万物に対して 平等である。

―― 動じない人について 問う人があれば、その美点を わたくしは ( このように ) 説くであろう。



盗みを行ってはならぬ。    嘘を語ってはならぬ。 

弱いものでも、強いものでも、あらゆる生きものに、慈しみ ( いつくしみ ) をもって接せよ。 

心の乱れを感ずる時には、「 悪魔の仲間 」、であると思って、これを 除き去れ。



他人から ことばで 警告された時には、心を落ち着けて 感謝せよ。   

共に修行する 人々に対する すさんだ心を 断て。  

善いことばを 発せよ。  その時にふさわしくない言葉を 発してはならない。

人々をそしる事を 思ってはならない。



世間は無明 ( 暗黒 ー 正しい智恵の無い事 ) によって覆われている。   

世間は 貪りと 怠惰の故に 輝かない。  欲心が 世間の けがれである。   

苦悩が 世間の 大きな 恐怖である。



この世において、見たり 聞いたり考えたり、識別した 快美な事物に対する欲望や貪りを除き去る事が、

不滅の ニルヴァーナ ( 平安 ) の 境地である。

この事を知って、よく気をつけ、現世において 全くわずらいを離れた人々は、

常に 安らぎに 帰している。     世間の執著を 乗り越えているのである。



いかなる 所有もなく、執著して 取る事がないこと、  ―― これが 洲 ( 避難所 ) に ほかならない。

それを ニルヴァーナ ( 平安、究極の安楽 ) と 呼ぶ。    それは 老衰と 死との 消滅である。
 


愛欲と 憂いとの 両者を捨て去ること、 沈んだ気持ちを 除くこと、 悔恨を やめること、

平静な心がまえと思いの清らかさ、―― それらは真理に関する思索にもとづいて 起こるものであるが、

―― これが、無明を破ること、正しい理解による 解脱 ( 心の解放 ) 、であると、わたくしは 説く。




                   岩波文庫 ワイド版 「 ブッダ の ことば 」 より 抜粋



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