(訳注)以下の文書は、リス・デイヴィズが一八八一年に「インド仏教史に見られる宗教の起源と成長について」と題してヒッバート講座でおこなった計六回の連続講義の第一講の部分を訳したものである。ここでリス・デイヴィズは、仏教を主な素材として、宗教思想の成り立ちについて比較宗教学的な考察を加えている。ヒッバート講座は、ヒッバート財団が主催の世界宗教に関する連続講義であり、現在も続いている。
第一講「宗教思想の発展における仏教の位置付け」
宗教の比較研究の正しい使い方と間違った使い方
きわめて長い年月のあいだ多くの人に影響を与えてきたこの大きな思想運動について、六回の講座、すなわち六時間で適切な説明をするというのは、たいへん困難な作業になります。このため、ありがたいことに、我々に割り当てられた仕事は、もっと軽いものになりました。すなわち、宗教の起源と成長を考えるうえで参考のなるようないくつかのポイントを、仏教史から取り出してお話しするというものです。
私の理解によれば、このことは、仏教徒の信仰の内面および外面について、その起源と成長を論じることを意味します。簡単に言えば、我々がやるべきことは、比較研究という特定の方法論を、仏教史で明らかになった事実の研究に応用することです。
