彼が論じたすべての主題は莫大な数にのぼる。彼が残した著作はすべて未完成のままなのだが、そこに記された成果は、あまりに重要かつ確実なので、今後どのような批判・批評にも耐えうるだろうし、歴史はこれらの成果をまったく議論の余地のない明白なものとしてこれ以降の年代記に記録しなければならないだろう。
ギリシャやローマなど古くから研究されている古代学においてでさえ、先人たちの仕事を学び、それを補完しながら、揺るぎのない事実にまで至るのはたいへんな功績である。ましてや、全く新しい研究分野でこれだけの精度と広がりを持たせること、膨大な未開拓領域において全く過ちをおかさなかったこと、見通しの悪い困難な道で迷わなかったこと、これらは以前にほとんど見ることのできない傑出した大偉業である。
お手本となる人がいかに輝かしい人物であっても、その人と同じことができることなど滅多にない話であり、その人の真似をすることなどほぼ不可能である。ウジェーヌ・ビュルヌフ氏は、父親から天性の才能を受け継いだだけでなく、それをもっとも有効に粘り強く使う方法を知っていた。
加えて、彼は、きわめて恵まれた文献学の教育環境の中で育ったが、それを活用する術も心得ていた。父から受けた教えを天性のインスピレーションに結びつけた。おそらく、父親の教育が彼のインスピレーションを呼び覚まし、彼が自分自身の中でそれを練り上げたのだろう。
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ビュルヌフは、初めて法華経を翻訳したことでも有名。