マチの後を追いたいくらいにギリギリのところに来てしまい、
オーバードーズを繰り返しながら眠る。

動けるようになって、仕事を再開した時。
んん? と思い出した。
起きた時に、わたしの脳に直接、メッセージが来たのだった。

「天に上がりました。」

たったそれだけの短いフレーズ。

天に上がった…って?
誰…。マチ?
マチなの?
マチ、やっと天国に行けたって言ってるの?

マチはあまり人間語を話さない子だったので、
マチかどうかわからない。
声で聞こえたのではなく、脳に直接「言葉」が届いたので、
マチのあの可愛い声だったかどうかもわからない。

それを誰にも言えなかった。
夢で、やせてやつれて汚れたマチを見て、触ることが出来て、
なんでこんなにやつれているのか、死んだときの姿よりもはるかに、
痩せて骨がゴツゴツしていた…。
毛も汚れていた。
天国に行けてないのかと思った。

だから、「天に上がりました。」と言うとしたら、
マチしかいない。マチだと思う。
だけどそんなおかしな話、誰にもしなかった。

静かに仕事をしていると、猫を多頭飼いしており、
マチの死後に大きな花束をすぐ手配してくれた友人から、
ラインが来た。

友人の友人から連絡をもらったそうだ。
多頭飼育の飼い主さんが急逝されて、
残された猫がおり、家族の人が飼い主を募集している、と。

飼い猫だった子は、それは願ったりかなったりだ。
わたしは年齢の壁があって、保護団体からはもう絶対に子猫はもらえない。
後見人として若い友人があとを引き取る約束ができているからと、
可愛い子猫に一度問い合わせをしてみたが、
門前払いされて、悲しかった…。
でも、飼い猫で、誰を通すこともなくダイレクトにいただけるとなれば、
これ以上最高な条件はない。

まだお若い男性が急逝されたようで、そのお姉さまが表立って募集をしておられた。

わたしは、友人に詳細を尋ねてもらった。
妙齢の女の子がいるかどうか。
最初は9匹いるという話だった。
なかなか繋がらなくて、話が出来た時には残り4匹になっていた。
写真をもらってくれて、送って来てくれた。

4匹のうち、三匹が男の子で二歳半。
もう一匹が女の子で、その三人の男の子のママ。4歳。

女の子は一人で4歳。年齢はちょうどいい。

写真を転送してくれた。
男の子たちは全員白黒のハチワレで、柄行が全員違う。
女の子はほぼ白で少し頭に柄。

わたしは、もちろん、好きな毛色とか、好きな目の色とかあるけれども、
唯一、「女の子」という条件だけは譲れない、と言ってきた。
それは、以前、部屋に入れた男の子にゃんこが、オシッコの癖が悪くて、
部屋中でジャージャーされて、
わたしがノイローゼになってしまったのだ。
マチはストレスで黒かった背中に白髪が急に出始めて、
その男の子にゃんこも、ストレスで顎が丸ハゲになった。

進むことも後退することも出来ず、わたしはおかしくなった。

見かねて、夫が夫の家にその子を入れたのだが、
和室の和ダンスの上でもじゃあじゃあされて、
とうとう夫も耐えられなくなり、
その子は、お外に戻りたい!とうるさく言うので、
ある日、窓を開けて、「選びなさい」と言ったら、
彼は部屋を出て庭を横切り、ガレージに居ついた。

わたしたちは急いで、堅牢な犬小屋を注文し、
ガレージに床を張り、電気を引いて来て、
届いた犬小屋にベッドを仕込み、暖房のマットを仕込んだ。
彼はそこに住むこととなり、わたしと夫とで、そこへ世話をしに行った。

住まいがガレージであるというだけで、家猫であった。
うちの子だった。
怪我をすれば捕まえて病院に連れて行き、

毎年一泊の検診で全身を見てもらい何万も払った。
朝は夫が見て、わたしが夕方と夜中に見に行って一緒に過ごした。
償いでもあったし、とても愛して来た。
可愛くて小悪魔ちゃんだ。

今はその子は、夫の家のリフォームで部屋を一つもらい、
部屋猫として余生を静かに過ごしているが、
オシッコは相変わらず、当てつけでわざとやったり、
漏らしっちゃったり、失敗したりと、ダダ漏れだ。

だから男の子はそれが怖かった。

しかし。
送られてきた写真の一枚に、わたしは射抜かれた。
か…かわいい…。
いや…いやいや、男の子…
ええ?
いやいや…。

わたしが気に入ったのが男の子だと伝えると、友人は、
女の子だって、当てこすりでオシッコする子がいること、
男の子でもいつもトイレでしかしない子がいるから、男女差はないよ?と。
でも、聞いてみるねと、聞きにくいことを尋ねてくれた。
答えは、
早くに去勢しているのもあって、スプレーは一切しません。
この子はトイレ以外でオシッコしたことはありません、とのことだった。

そのタイミングで夫が帰って来て部屋に来た。
急いで説明して、相談した。
 

マチが死んで、泣いてばかりいるわたしに、「なんならまた保護猫を迎えても良し」と、
夫が言ってくれたから、友人に声を掛けておいたのに、
いざ見つかったとなったら、「猫費用はキミが全部払うんだよ?」と
ズゴン!と釘をぶっ挿した。
いやいや、病院代はお願いだよ、他にもうどこにも行かなくていいし、
何もねだらないから!
それで写真を見せながら相談したのだが、説教ばかり。

マチに酸素室を借りる時、大きいサイズにしてもらったので、
それを置くのに、部屋の中がぐちゃぐちゃになった。
そしてマチに死なれて、悲しみのあまり、何も手を付けられず、
逆に狂ったように仕事をした。
資材もどんどん買った。
片付けないまま山が増えて、いまはまっすぐ歩くことも出来ない。
それを説教されたって、言うてる間に片付けを始めたほうがよかろうが?

片付けることを約束して、手伝って欲しいですと懇願した。
すると、夫は「この女の子はダメ。この子ならばいいよ、あとは、そのお友達と、
相談しながら決めなさい」と許可をくれた。

マチ…。
 

マチは、このために尽力して、あんなにやつれたの?
この子を見つけて、この子ならばいいよってつなげて、
それで「天に上がった」の?

わたしは友人に頼んで、その男の子をおさえてもらい、
その後、直接やり取りをして、
もらい受けることになった。
ただ、安全な部屋にしたいので、二週間くださいとお願いしたら、
承知していただけた。
こちらから車で、もらい受けに参りますとも伝えた。

まさか、まさかの男の子。
だけど、殺人的に可愛くって、射抜かれてしまったのだ。
マチ…
マチは何があってもママの最高級の天使ちゃんで、永久に変わりないよ。
マチがこの子を派遣してくれたの?
ママが死んでしまいそうだったから?

安心して天に上ったの?
いいの? マチ…。


わたしを射抜いた、ハチワレ君。
まだ正式譲渡になっていないので、目を隠しています。

何回見てもめちゃくちゃ可愛い。
いや…もっと可愛い猫もいた。保護団体に一杯好みのタイプの子はいた。
でも、ズキューン! と来たのは、「運命的」だから…。

この話にはもう一段階、不思議なことがあります。
追って書き加えます。

リフォームなみの、おおお片付けを明日から始めます。
こんなに早くに縁が繋がるとは思ってなかったので大変💦