アーシュラ・K・ル=グウイン(Ursula K. Le Guin) の『空跳び猫』をはじめとするファンタジーのシリーズには、
『帰ってきた空跳び猫』 『すばらしいアレキサンダーと、空跳び猫たち』 『空を駆けるジェーン』 の計4作があります。
『空跳び猫(CATWINGS)』 は都会のゴミ捨て場で生まれた4匹の猫たちに、羽根が生えていたことから、始まります。
母猫は、のほほんと、その事実を受け止め、「羽根が生えているのは、ここから、飛び立って行かなければならないからよ。」と、都会から出ていくよう促します。
4匹は、羽根をはばたかせて、都会を旅立ち、「丘の上の農場」にたどり着くのでした。![]()
『帰ってきた空跳び猫( CATWINGS RETURN)』 では、4匹のうち、2匹が母猫に会いたいがために、都会に戻るところから始まります。
そして、やっとたどり着いた都会の壊れたビルの中で、ジェーンという黒猫に出会います。ジェーンは、恐怖を味わったために、口がきけなくなっていました。2匹の猫は、ジェーンを田舎に連れてかえることにします。![]()
『素晴らしいアレキサンダーと、空跳び猫たち( WONDERFUL ALEXANDER AND THE CATWINGS)』では、羽根の無い普通の猫、アレキサンダーが登場します。彼は、飼い猫で、不自由のない暮らしをしていましたが、新しい世界を求めて家出をします。
途中で、ジュエーンに出会い、口のきけない彼女の心を癒し、彼女は彼のおかげで、口がきけるようになるのです。![]()
最後に『空を駆けるジェーン(JANE ON HER OWN)』 では、口のきけるようになったジェーンが、田舎の平凡な暮らしに飽きて、都会を目指すところから始まります。
彼女は、都会にたどり着きますが、やさしい振りをした人間につかまり、部屋の中に閉じ込められます。そして、人間は友人たちの前で、ジェーンを見世物にします。
しかし、ジェーンは隙をねらって、逃げ出し、猫の気持ちのわかるおばあさんのところにたどり着き、首輪をはずされ、そこで暮らすことになるのです。![]()
4作品のあらすじは、このようなものです。
猫に羽根が生えているのを、のほほんと受け入れた母猫は、えらいです。さすがですね。他者と違っていていいということを、やさしく教えています。
猫を取り巻く環境の変化にも、注目です。
おそらく、作者は田舎=自然推奨派なんだろうけれど、4作目で、ジェーンが最終的に都会を住みかに選ぶということは、結局、都会や田舎にとらわれず、周囲の人間(猫)関係が重要なんだ
というところにたどりついたのかなと思います。
ジェーンが口がきけない黒猫で、アレキサンダーが全くの普通の猫だという設定もおもしろいです。ジェーンは他と違う羽根を持ち、黒い。異種猫と普通猫が、仲良くなってお互いを癒しあうところが、なんとも素敵ですよ。
また、最後にジェーンが、田舎を飛び出し、都会を目指すところは、才能ある現代女性の化身のような気がして、拍手を送りたくなりますね。
このように、裏を探れば、いろいろと解釈できる作品群なのですが、
実はこれらは、単なるファンタジーであります。
私のように、屁理屈を並べることなく、子供の枕元で、読み聞かせてあげるにふさわしい寓話であると思っています。
時々、うちの猫たちに羽根が生えているかどうか、確かめたりして。('-^*)/
あっ、それと、これには、すばらしい猫たちの絵が、満載です。可愛いですよ。![]()
アーシュラ・K・ル=グウィン (ゲド戦記の作者) 村上春樹訳 『空跳び猫』 1996年
同 『帰ってきた空跳び猫』 1996年
同 『素晴らしいアレキサンダーと、空跳び猫たち』 2000年
同 『空を駆けるジェーン』 2005年
以上、全て 講談社刊
あっ、それと、全部、文庫です。