ひとが命を終えるということ
私は20歳ではじめて人のいのちが尽きるさまを見ました。
医師だった祖父
賢くて、人が良くて、少し不器用なところもあって、焼酎が好きで、心配性で
みんなに尊敬されてた。
私は祖父のほんの一面しか知らないんだろうけど
本当に優しくて、初めての孫である私を
すごくすごくかわいがってくれた。
ずっとずっと元気で可愛がってくれると思ってたのに、
病気になって
私のこともわからなくなってしまった
久しぶりに会った祖父に
「どちら様ですか?」
って言われたとき笑顔で答えたけど
ほんとうは泣きたかった
うつろな祖父の眼はもう世界を正しく映していなかった。 ただ、その眼の優しさは変わらなかった
どんどん弱っていく祖父
それを支える祖母と母
私は大学生になって田舎から出て、あまり祖父のことを考えなくなった
祖母が、母が、どんな気持ちで毎日介護してるかなんて知らずに過ごしてた
昨年の暮
おじいちゃんもうあんまり長く生きられないから帰っておいで と言われ帰った
変わり果てた祖父がいた
呼吸器をつけて、眼はほとんど閉じかかっていた
弟とふたりで、病室で泣いた
何度も何度も、祖父のむくんだ手を握った
たまに、握り返してくれた気がした
その数日後、祖父は他界した
葬式ではじめて、祖母が泣くのを見た
静かで綺麗ななみだがぽろぽろこぼれていた
たくさんの子供たちの命を救ってきた祖父
人のために朝も昼も夜も働いた祖父
私は悔しかった
こんなに人に尽くした祖父が、どうして早くに病気になって、死ななければならないんだろう
もっともっと幸せに長生きしなければならない人だったのに
不条理だと思った
どんなにいいことした人でも死ぬんだと思った
今ある命をだいじにしなきゃならないと思った
自分もだいじにしなきゃならないと思った
祖父が少しでも幸せを感じてくれているといいな
祖父が医師として守ったいのちがたくさんたくさん輝きますように。
おじいちゃん
私一生懸命いきるよ
みていてね。