時刻は21:00

宿に車を泊めた。

全室オーシャンビューだが、熱海駅までは徒歩20分以上ある。

旅館内に居酒屋があるというものの、行ってみると客はゼロ・・・。

とてもじゃないが、この中で夕食を取る気にはなれない。

二人の意見は一致し、タクシーを呼んでもらうことにした。

とても陽気なタクシーの運チャンだった。

まだ夕食を食べてないことを告げると、
一番オススメの魚料理の店に連絡を取ってくれた。

しかし、あいにく満席との事。

運転中、携帯で電話をするタクシーの運チャンに驚きつつも、
「じゃあ、焼鳥にしようぜ。」

と言う無邪気な笑顔に逆らう気は毛頭なかった。

店構えはおおよそ熱海には似つかわしくはない、高円寺か中野にあるようなちょっとオシャレな焼鳥屋だった。

店に入ると、狭い店内にはテーブルが三つ。

一番奥のテーブルには常連らしき作業服を着た三人組が、大声で騒いでいる。

キョロキョロと店を見ながら、生を二丁注文するとPOPが目に入った。

‐2010年B級グルメグランプリ 「鳥モツ煮込」入荷!¥500(甲府のそば屋さんに教わってきました)‐

早速、それを注文しようとすると意外な言葉が返ってきた。

「お通しで出しますから。」

…ただならぬ予感をした。

実際に出てきた鳥モツ煮は、ぶっ飛ぶくらい旨かった!

久しぶりに料理で感動した。

続く串焼きも、旨かった。

彼女と料理に感動しながら話している途中、
浴衣の男二人組がガラガラとドアを開け、狭い店隣の席に着いた。

乾杯の時間の後、自然な流れから会話が始まり、

彼等は俺達をカップルだと思っていたらしい。

「え?ウソでしょ?

「いや、本当です。知り合ったばかりで、熱海に行きたいって行ったらたまたま予定が合って一緒にいるんです。」

と俺が言う。

不思議な顔をしながら

「だって彼氏いるんでしょ??」

軽くは見えない彼女が嬉しそうに笑いながら口を開く。

「本当です。たまたま昨日誘われて来てるんです。」

あっけらかんとする男を横に、もう一人男がフォローを入れる。

「わかるよ、そういう事ってあるよね。」

と明るく笑った。

場が和んで、俺はウーロンハイを注文した。

つづく