ベッドが、歯医者さんの椅子のようになっていて、何人も同じように並んでる。
頭上のライトだと思っていたものは、蓋が開いて、中には料理が入っていた。
逆さ向いているのに、落ちてこない。
それを、他の人は上手に寝転んだまま食べてる。
私だけ、やり方がわからない。
目の前には湯気を立てる美味しそうな料理。
そのうち、知人がいることに気付いて、声をかけるけど、返事をくれない。私は何度も声をかける。やっぱり何も答えてくれない。
今度は公園に切り替わる。
プレハブ小屋のような建物に入る。中は薬局になっていた。
私達は、何かから逃げてる。
大きな窓から田んぼと線路と道路が見える。
振り返ると、海辺のような景色。
そしてまた振り返ると、白い建物が見える。
私は息を潜めてなきゃいけない。
屋根の上の知人は、飛び降りるタイミングを見計らってる。彼が捕まっちゃいけない。
今だ!というタイミングで、顔だけを出して「今!逃げて!」と声を出す。
だけど、上手く行かない。また隠れる。
そうすると、いつの間にか、看護師さん二人が両サイドにいて、私の手を抑えてる。
顔を出したいのに。飛び出したいのに。
あっ!タイミングが来る!
「今!!早く!!逃げてっ!!」
大声を出す。
両手は押さえられてる。
横には、悲しい顔をした看護師さんがいた。
61758年42月38日。
暑い。
ベッド横には、アラーム音が鳴る機械がある。
私の思考を、見てる景色を、この機械に悟られてはいけない。
暑い。
呼吸が荒くなる。
私は色んな夢を見る。
ルーレットが探している夢に止まることを願いながら、機械を見つめて、呼吸を止める。
まだ。
まだ息を吐いてはいけない。
まだ。
あと少し。
暑い。
ぷはぁーーー!
ピコンピコンピコン!!
機械に気付かれてしまった。
私の見たい景色まであと少しだったのに。
8325年71月301日。
私のベッドの横には大きな窓がある。白く明るい空間。
ここから出なくちゃいけない。
過去の、関係のうまくいかなかった人を思い出す。
ベッド柵に親指をぐるぐる這わす。
人生は巡る。
良いことも悪いことも。
ぐるぐるぐるぐる廻る。
どれが良いとか悪いとか、そんなのは時によって、感じる人によって、違うもの。
どれが正解なんて、わからない。
親指をぐるぐるぐるぐる。
窓の向こうには、観覧車。プール。
ここじゃない所に行きたい。
ううん、私はどこへでも行けるんだ!
忘れてた!
早く行かないと!
でも、点滴が繋がってる。色んな管も。
全部、いらないのに。
布団の中で、一つずつ外す。
液が垂れてるけど、知らない。隠さなきゃ。
おしっこの管は、ひっぱってもとれない。
なんで?
どうして?
そのまま行くしかない。
早く行かないと。
きっと、どこへでも行ける。
空だって飛べる。
なのに、見つかって、ベッドへ連れ戻される。
入口で、何人も助手さんが見てる。
見ないで!
こっち見ないで!!
息を潜めて、私は透明になるように掛け布団を頭まで被る。
真っ白いシーツの中、私は思う。
ーーきっと、これは夢だ。
ーー目が覚めたら、現実に戻ってる。
「目が覚めたら、現実。」
何度もそう呟いて、目を閉じる。
どのくらい時間がたったのか、目を開ける。
一番に視界に飛び込んできたのは、白い拘束具がつけられた右手。左腕は板が当てられ、また点滴が繋がっている。
そして、ふと思う。
ーー全部、自分のしてきた通り。
ーーこれが、今のわたし。