3015年58月91日。

ベッドが、歯医者さんの椅子のようになっていて、何人も同じように並んでる。


頭上のライトだと思っていたものは、蓋が開いて、中には料理が入っていた。

逆さ向いているのに、落ちてこない。

それを、他の人は上手に寝転んだまま食べてる。


私だけ、やり方がわからない。

目の前には湯気を立てる美味しそうな料理。


そのうち、知人がいることに気付いて、声をかけるけど、返事をくれない。私は何度も声をかける。やっぱり何も答えてくれない。



今度は公園に切り替わる。


プレハブ小屋のような建物に入る。中は薬局になっていた。


私達は、何かから逃げてる。


大きな窓から田んぼと線路と道路が見える。

振り返ると、海辺のような景色。

そしてまた振り返ると、白い建物が見える。


私は息を潜めてなきゃいけない。


屋根の上の知人は、飛び降りるタイミングを見計らってる。彼が捕まっちゃいけない。


今だ!というタイミングで、顔だけを出して「今!逃げて!」と声を出す。


だけど、上手く行かない。また隠れる。


そうすると、いつの間にか、看護師さん二人が両サイドにいて、私の手を抑えてる。


顔を出したいのに。飛び出したいのに。


あっ!タイミングが来る!


「今!!早く!!逃げてっ!!」


大声を出す。

両手は押さえられてる。


横には、悲しい顔をした看護師さんがいた。




61758年42月38日。


暑い。


ベッド横には、アラーム音が鳴る機械がある。


私の思考を、見てる景色を、この機械に悟られてはいけない。


暑い。


呼吸が荒くなる。


私は色んな夢を見る。

ルーレットが探している夢に止まることを願いながら、機械を見つめて、呼吸を止める。


まだ。

まだ息を吐いてはいけない。


まだ。

あと少し。


暑い。

ぷはぁーーー!


ピコンピコンピコン!!

機械に気付かれてしまった。


私の見たい景色まであと少しだったのに。




8325年71月301日。


私のベッドの横には大きな窓がある。白く明るい空間。


ここから出なくちゃいけない。


過去の、関係のうまくいかなかった人を思い出す。

ベッド柵に親指をぐるぐる這わす。


人生は巡る。

良いことも悪いことも。


ぐるぐるぐるぐる廻る。

どれが良いとか悪いとか、そんなのは時によって、感じる人によって、違うもの。


どれが正解なんて、わからない。


親指をぐるぐるぐるぐる。



窓の向こうには、観覧車。プール。


ここじゃない所に行きたい。


ううん、私はどこへでも行けるんだ!

忘れてた!



早く行かないと!


でも、点滴が繋がってる。色んな管も。


全部、いらないのに。


布団の中で、一つずつ外す。

液が垂れてるけど、知らない。隠さなきゃ。



おしっこの管は、ひっぱってもとれない。

なんで?

どうして?


そのまま行くしかない。

早く行かないと。


きっと、どこへでも行ける。

空だって飛べる。



なのに、見つかって、ベッドへ連れ戻される。


入口で、何人も助手さんが見てる。

見ないで!

こっち見ないで!!


息を潜めて、私は透明になるように掛け布団を頭まで被る。


真っ白いシーツの中、私は思う。


ーーきっと、これは夢だ。

ーー目が覚めたら、現実に戻ってる。



「目が覚めたら、現実。」


何度もそう呟いて、目を閉じる。



どのくらい時間がたったのか、目を開ける。



一番に視界に飛び込んできたのは、白い拘束具がつけられた右手。左腕は板が当てられ、また点滴が繋がっている。



そして、ふと思う。


ーー全部、自分のしてきた通り。

ーーこれが、今のわたし。