この季節になると、午後5時ともなれば、いきなり薄暗くなる。
いわゆる“たそがれどき”である。
“黄昏時”、昔は“誰そ彼時”とも書いた。
「そこにいるのは誰?」というほどの意味である。
夕陽が落ちて、空が頬を染めるように赤くなる。
この時間帯に街を歩くと、いろいろな発見がある。
いつもは通りすぎるガレージの一角に、小さなクレープの屋台が出ていた。
お店をやっている女性に聞くと、夕方からこのスペースを借りて屋台を出しているのだそうだ。
普段は食べないクレープを買って、食べながら歩く。
そこから少し行くと、細い路地があった。
もしかしたら、元々は幅の狭い水路だった場所で、そこを暗渠にしたのかもしれない。
そう考えながら路地に入ると、途中によその家の裏庭のようなところを通った。
その路地から家の中が見えるのだが、家の中ではおじいさんがちゃぶ台の上に並んだ夕ご飯を食べていた。
家の中から、ラジオの音楽が聴こえてくる。
その音楽もノスタルジックな、戦前の歌謡曲のようなものだ。
慌ててその路地を通り抜ける。
そのとき、ネコが前を通り過ぎた。
ネコはこちらを振り向いた後、素早く何処かへ姿を消した。
この路地の“住人”だろうか。
そんな一連の出来事に、むかし一度体験したような感覚を覚える。
それが、“たそがれどき”たる所以なのだろうか。