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Sさんとのデート。



それだけでもドキドキするのに、
今回は、


「ちょっとだけフォーマルな格好で来てくれますか」


とのお誘い。




「バレンタインデーのお返しがまだだったので」




ということなのですが、



一体、わたし、どこに連れてかれるんだろ!




そもそも、
バレンタインデーなんて、
ほんと大したものあげてないしっ。


確かに、
何度も作りなおして研究はしたけど、
ただの手作りチョコレートだしっ。



んでも、
確かに超ドキドキなんだけど、




楽しみでもあるっ!(だって、フォーマルな格好とかしたことないから)




これは、オシャレが大変だぜっ。


と思っていたのですが、
もともとフォーマルな服なんて持ってないので、
悩むことさえ許されない私。



う、う~ん。バリエーションが少ない。



しょうがないので、
髪の毛だけでも悩んでみるフリをすることにします。



やっぱり、
新しい服買ったほうがいいかな。


とか、髪の毛を色々やりながら考えてる私。



でも、あんまり張り切り過ぎても、
恥ずかしいしなぁ。


「ちょっとだけフォーマル」って言ってたから、
以外に、普通のお店だったりするかもしれないしなぁ。





・・・で、当日。



お店に到着と同時に、超後悔してる私。



めちゃくちゃ上品なお店なんだけど・・・



こんな服で入って逮捕されないかしら。



いつもと違って、
オシャレスーツを着てるSさんが、


「行きましょっか」


と軽くエスコートしてくれます。



「こういうとこ来ないから、ちょっと緊張しますね」


とSさん。



「は、はい。私とか、Sさんの3倍は緊張してます」


おかしそうにクスクス笑ってるSさん。
いや、冗談じゃないんだよ、ほんとに。




席に座って、
ちょっと周りを見渡してみると、
みんな上品そうな服を着てます。


私、浮いてる?



「Sさん、本当はこういうとこ、よく来たりするんじゃないですか?」


と間が持たないので聞いてみると、


「全然来ないですよ。こういう時じゃないと」



もうっ! バレンタインデーのお返しなんだから、もっと軽い感じでいいのにっ。


といいつつも、
興奮してるのか何なのか、
心臓はドキドキしてます。



お店のボーイさんがやってきて、
メニューを渡してくれます。


「飲み物はワインでいいですか」


とSさんに聞かれて、


「は、はい。おまかせしますっ」


と、ちょっと声が上ずってしまう私。




職場の上司に無理やり連れて行かれる居酒屋とは、
かなり違います。


「まずは、かけつけビールでいいだろっ」


と全く女子扱いしない上司の言葉を思い出して、


「ずいぶん遠くへ来たもんだ」


と懐かしんだりします。




ボーイさんと何やらごにょごにょしてるSさん。


ワインについて、
相談しているらしいのですが、
耳をそばだててみても、
何が何やら頭がレタスって感じです。



ボーイさんがいってしまって、
ちょっと心を落ち着けて水を飲みます。


なんか、水も美味しくてびっくりします。



「きょ、きょうのスーツおしゃれでかっこいいです」



何かしゃべらなきゃと思いつつ、
そんなことを口走ってしまう私。



Sさん「何か、無理してる感じないですかね」


私「そんなことないですよ。似合ってます」


Sさん「よかったです。安心しました」



キラリンと微笑むSさん。


でたっ! Sさんスマイルっ!


思い起こせば、
私が恋に落ちたのもこのスマイルがきっかけだったんだよねぇ。


う~ん。やっぱり、魅力的だなぁ。

他の女の子にとられたくないよっ!




私「あの~。ちょっと言いにくいんですけど」


Sさん「な、なんですか」



顔を近づけて、こそこそとしゃべるふたり。



私「何となく、このお店高そうですけど・・・。私、割り勘でいいですからね」


Sさん「あ、あぁ。それなら大丈夫ですよ」


私「でも、私の方は、全然大したものあげてないし」


Sさん「いえいえ、手作りだったでしょ。チョコ。そういうのはお金にかえられませんから」



きらりんっ



あぁ。また出た。Sさんスマイル。
んもう、この爽やかさを、うちの職場の同僚たちにも見せてやりたいよっ。



「それに、いつもそんなにお金使わないんで、いいんです。こういう時は」



そ、そうですか。

私なんかに、ホントにありがたいことです。はい。



恐縮しまくりで、
また、水を飲みます。


あぁ、おいしい。何で、水なのにこんなにおいしんだろ。
きっと、あれだろうな。
料理長がアルプスとかまで、自分で汲みに行ってるんだろうな(たぶん、違う)。



はぁ。それにしても、こんな幸せミラクルが私の身に訪れるなんて。

ほんと、色んな奇跡に感謝だなぁ。



やがて、ワインが運ばれてきて、
それが、また、おいしくって、おいしくって、
びっくりしました。


「すごく美味しそうな顔をしてますね」


と、またクスクスSさんが笑うので、
だって、本当においしいんだもんと思いながら、
ちびりちびり着実に飲みました。



次は、お食事が運ばれてくるのですが、
長くなってきたので、
つづきは次回に。




(おまけ)


う~ん。


控えめに見ても、
もう、彼女扱いされてる気がするんだけど、
ここまできても、
私の勘違いってことあるかなぁ。


ない。


たぶん、ないと思うんだけどなぁ。


これで、私の自意識過剰とかだったら、
もう一回30年の人生を見直さなきゃな。


いや~、
でも、たぶん、彼女になれる気がするっ。きっとっ!



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