どうしてもと、誘ってしまった…。
強引だっただろう。
変に…思われただろうか?
それに長野に住んでいる私が東京の良い店を知っているわけもなく、結局入ったのは洒落たレストランなどではなく目についた近場の居酒屋だった…。
「ヤマモトさんは…」
「クリハラさんは」
うっ、なんというタイミングの悪さ。
緊張が更に高まってしまう。
そんな私の動揺とは裏腹に、
「くふふ…」
可愛いらしく笑う…。
この笑顔を見れたなら良かった。
そう思えて、この子の全てにどんな事も救われる気持ちだ。
「タイミングが同じでしたね」
「くふふ、ほんとに!」
「どうぞ…先に話してください」
私もつられて笑顔になってしまう。
「あの…」
「クリハラさんは絵本がお好きなんですか?」
「あぁ、この本は病 院の子供に読んでもらおうと」
「病 院?」
少し小首を傾げる仕草一つにもドキドキして、この子の質問を聞き逃しそうになってしまった。
「あ、私は医者なので…」
「お医者さんなんですか!」
「くふふ、絵本をプレゼントなんて優しいお医者さんですね」
「この絵本は好きで…」
緊張を解きたくて目の前に有る日本酒で口を潤した。
「出会いは数ではなくて良い、一つ一つの出会いを其々丁寧に考え、沢山でも一つでも自分が大切と思うものを見つけそれを大切にして欲しい…」
「子供だが友達でもあるその子に、そんな想いも有ると思ってほしくて」
自分の想いを話す事に…、
また、目の前の酒に手が動く。
「私自身も…、日々、目まぐるしく現れては過ぎていく病の多さに、命の大切さを疎かにしていないかと」
「あ、申し訳ない。会ったばかりの人にこんな話を」
じっと私を見つめる黒目勝ちな瞳に、退屈させてしまったかと焦る。
「クリハラさんはきっと大丈夫ですよ」
ニッコリと微笑むその美しさが、
「あ、ありがとう…」
生死に麻痺してしまいそうな私に…、
私には、この子が必要なんだ。
緊張のあまりか酔ってしまった私は…
気がついたら知らない部屋で寝ていた。