「寒そうで、ほっとけなくなる…」
自分の素直な気持ちを思わず口にしたのに、
「ご、ごめんなさい。お医者さんに心配かけてしまいましたね、気を付けます」
返ってきたのは、職業故の気遣いへの返礼。
医者だから、あなたを心配しているわけではなく…。もどかしい自分の気持ちに苦しくなる。
他愛ない話を彼とする。
くふふ…と、不思議な可愛らしさで笑う。
ずっとこして、この笑顔を、この声を聞いていたい。
駅に着き、電車を待ちながら
問題も解らない答えを探す。
これで別れて良いのか?
仮に次に会った時、
彼は彼のままなのか?
出逢いは人を変える。
今の私のように…。
そして傲慢にも、
私の知らないところで、あなたが変わる事を望まない自分に気づいてしまった。
もっと今のあなたを知りたい。
別れの握手をして、手を離す…。
指先が離れた時に、それすらも堪えられず手を握りなおした。
「長野へ、一緒に行きませんか?」
「え!?」
「私は…、まだあなたと話がしたい…」
「あ、…」
「嫌…だろうか?」
「嫌、では…ないです」
うつむきながら、
赤くなる耳と、
小さく聞こえたその返事に、
確認もとらず、
私は強引にヤマモトさんの手をとってホームへと歩き出した。