「これだけの要人を集めながら、警備のあまいパーティーだ…」
知らず愚痴を呟いてしまったが、
それだけこの国が平和だという事。
しかし…、
「御前もいらっしゃるというのに」
三橋の警備のその外に張り巡らせたこちらの警備は万全だが、
中で見れば見るほどこの程度の三橋の警備に御前を託さなければならない自分に、イライラが気持ちの中に溜まっていく。
一介の運転手の身ではパーティー会場で御前の側にもいられない。
御前の使用人としてその様な無粋な事は出来ないのは、わかりきっているが…。
管理室に入る事は許されているので、会場横で控えているよりも御前から離れるが、監視カメラの映像を確認に行った。
御前は既に一人の女性と談笑されている様子。
女性は、三橋の娘のようだ。
不思議と、
御前には何かが見えているかの様に、
その視線の先、その御言葉の一つ一つがこれから起こる何かに繋がっている。
不意に、御前は女性と会場を出て行かれた。
私は急いで管理室を出て、御前の行かれた方向へ向かった。
屋敷の配置はわかっている。
会場の前の庭を抜け、御前の後ろ姿を確認する。
目の前にはガラス張りの大きな温室が有り、二人は中へと入っていった。
御前のアバンチュールの邪魔にならぬよう、私も音をたてない様になかに入る。
温室の中は小さな照明が灯りほの暗い。
しかし漂う甘い香りが、
月下美人の花が咲いている事を知らせる。
香りの元へ目を向ければ、
純白の花弁が重なる大きな花の姿が幾輪も、気高く、闇夜に輝いていた。
一夜だけの花。
そして、御前の御姿…。
艶やかな黒髪の形の良い丸い頭、そして綺麗に整えられたうなじ、
すぐにも手折れそうな細い首が、闇夜にも浮かび上がっている。
その御姿が、
ぐらりと揺れ、
白地に金の刺繍が施された上着の裾が、ふわりと翻り、まるで純白の孔雀が羽根を広げたかの様に…
「御前!」
地に倒れる直前に抱き止めた御前は、
見ていた以上に細く、その身体は夢の様に
軽かった…。