大阪では心療内科医の西澤弘太郎先生４９歳が、

埼玉では在宅医療医の鈴木純一先生４４歳が、

患者に焼き殺され、家族に撃ち殺された。

昔々故郷の伊勢の日赤病院では、精神科の部長先生が外来でガソリンをかけられ、廊下を火だるまになって転げて命を落としたことがあり、小学生だった私はその話を聞いて慄然としたのを今でも記憶している。

今回悲惨なカタチで命を落とされた医師たちに心から哀悼を感じつつ、

彼らより経験だけは長い先輩としてのコメントを記しておこうと思う。

私は、心臓疾患という超急性期の対象を２５年経験し、患者さん本人と家族と接し、そしてその接し方を後ろ姿あるいは言葉の使い方で後進のドクターたちを指導する立場となり、今、１８年前からは一匹オオカミとして、簡易宿泊所いわゆる「ドヤ」の患者さんを診察しそして看取る、その仕事をしている。

このポーラのクリニックを開くにあたって、

自分自身と職員たちの憲法的方針（理念）を決め、

そしてその具体的行動のためのロードマップを、

額縁に入れて待合室に掲示した。

寿町に住むおじさんたちは、とても純粋で思い込みが強く独りよがりで頑固で短気。

時に切れて大声出すし　ぶん殴るし、殺傷まがいの事件も時に無くは無い。

この寿で医療と看護介護を安全に展開するコツは、

ポーラのクリニックの理念に基づく医療人としての行動を徹底的に実行することに尽きる。

これが、ひいては自分の身を護ることになる。

そう思って、いまでも、朝のミーティングでは理念に基づいて方針を決めるし、発生したトラブル事項に関しては理念+行動目標に照合して反省・改善をめざしている。

今回の二人の４０代のドクターたちは、

ちょうど医者として独立し、押しも押されぬ地域医療のプロとして活動の真っ最中。

恐らくは親切な力のある、思いの強い先生たちだったに違いない。

思いが一直線のドクタ－が、思いこみが独りよがりで短気な患者とぶつかることは、容易に想像できる。

その際、弱い方の患者側は捨て身を覚悟で特攻的に自分の思いを伝えようとするに違いない。

弱い立場の人達は追い込まれた時の憤懣を、そのようなカタチで伝えようとする。

この点を理解して患者さんと家族に接していくこと、が、医師患者家族関係を円滑にし、満足される医療につながっていくのだと思う。

かつて研修医たちに

「せ・り・な・ま」

とよく唱えたものである。

ま：満足される結果に至るには、

な：納得してもらわなければならないし、

り：理解されなければ納得にはつながらないし、

せ：そのためには丁寧な説明から始める。

医者になって２０年もすると、みんな頭を下げてくれるし、自分は力を持ったことが体感できるし、４０代から５０代はちょうどそんな脂ののった世代である。

今回亡くなられた４０代の先生たちが「せりなま」を実行されていたかどうか？

を知るよしもないが、

コロナという、人との対面つながりをぶった切る要素が、今回の患者・家族とのミスコミュニケ－ションを招いた可能性は十分に考えられるかもしれない。

医療の基本は、目でみて、耳で聞いて、ニオイを嗅いで、触って、そして第六感を働かせて、その人の心の中を感じる。

五感と六感による医療、当たり前だがリモートでは得られない。

昨今、コロナにて発展しつつあるリモート診療を私が本能的に嫌う理由はここにあるが、

じいさんドクターだからしゃーない、と自己肯定してる

医療の基本「せ・り・な・ま」