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2x2(ツーバイツー)によるスラロームトレーニング

2x2理論によるスラロームのトレーニングについて書いています

1.はじめに

2x2(ツーバイツー)理論はアジリティーにおけるスラロームのトレーニング理論の一つとなります。

2x2理論は、従来のスラロームのトレーニング理論と比べ、概念そのものが大きく異なり、スラロームを全く別の切り口で分解し再構築する理論となっています。
そのため、従来のスラロームを知っているということが、逆に2x2理論の理解の妨げとなってしまい、その結果、熟練者であればあるほど2x2理論の本質を正確に理解することが難しく、誤った解釈が広まってしまっているのが現状です。

2x2という道具自体は使用していても、実際には2x2理論の実践ではなく既存のスラロームトレーニングの延長としての利用となっている例が数多く見られ、結果として、2x2理論の本来の強みであるスラロームの確実なエントリー等が実現できず、2x2理論自体が過小評価されてしまうことにつながっています。

本稿は2x2理論を図を交えてできるだけわかりやすく記述することにより、2x2理論の概念についての正しい理解を助け、2x2理論を正しく実践していただくことをその目的としています。

2.2x2理論の概念

まずは従来のスラロームの概念と2x2理論のスラロームの概念の違いについて考察します。

従来のスラロームの概念は図1のようなもので、スラロームを『12本のポールの集合』とみなし、左・右・左・右のようにジグザグに進んでいく障害として捉えています。

図1

一方、2x2理論は、スラロームを『12本のポールの集合』とみなすのではなく、図2のように『2本一組の障害6セット』とみなすところからスタートします。

図2

この2本一組の障害を2x2と呼び、2x2の1セットが一つの障害単位として扱われることになります。

つまり、2x2理論においては、スラロームは、ワンちゃんにとって、『12本のポールの集合として認識し、左・右・左・右と11回繰り返す障害』としてではなく、『2x2という障害が6つ並んでいると認識し、その6つを連続してクリアする障害』としてイメージされることになります。

従来のスラロームの概念でも、2x2理論の概念でも、結果としてのハンドラーの目に映るワンちゃんのスラロームの動きは同じものとなりますが、ワンちゃんがスラロームをどのように認識してクリアしているのかという点が重要なポイントで、この認識の違いが、スラロームのエントリーの精度に大きな影響を与えることになります。

3.2x2理論の導入

次に2x2理論の導入について考察します。

2x2理論においては、スラローム自体を、単一障害としてではなく、2x2という単一障害が6セット並んだ連続障害として捉えているので、まずは、2x2が1セットの単一障害をマスターし、次に2x2が複数セットの連続障害へと段階を進めることになります。

3.1.単一障害としての2x2

まずは、単一障害としての2x2について考えてみます。

2x2を一つの障害としてみなす以上、2x2がどのような障害なのか、つまり、2x2という障害のクリア条件の定義を行う必要があり、そのために、リワードラインという概念を導入します。
リワードラインは図3のように2x2を構成する2本のポールの延長線上にあるリワード(ご褒美)を示す矢印で、ワンちゃんは、リワードラインに対して右から左に2本のポールの間を通過し、リワードラインに向かうことが2x2という障害のクリア条件となります。

図3

図3の2つの2x2を見ると、リワードラインの設定により、2x2への入口が異なっていることがわかります。
リワードラインは2x2通過後にワンちゃんが向かう方向を指し示すだけでなく、2本のポールの間をどちらから通過するかを決定するラインでもあり、これにより、ワンちゃんは、左右対称である2x2を目にしたときに、どちらから通過すべきなのかを理解できるのです。

リワードラインはハンドラーが明示する必要があるので、2x2のトレーニング開始時には、まずリワードライン(ご褒美のある方向、ボールを投げる方向)をワンちゃんに示し、その後、トレーニングを行うことになります。

さて、2x2トレーニングを行う場合、まずは、2x2が1セットの単一障害を重点的に行うことがとても重要になります。

到達目標としては、図4のように、2x2を時計の中心に配置し12時の方向をリワードラインと設定したときに、1時から11時までの角度で7m程度離れたところから100%クリアできるパフォーマンスを目安にします。

図4

上記トレーニングを行う際、距離については短い距離から始めて徐々に距離を広げていくようにしますが、角度については最初から1時から11時の範囲で行います。
ハンドラーの位置は固定せずに、ワンちゃんの左や右、またいだ状態、離れた位置など、ワンちゃんがハンドラーのポジションに依存しないよう様々なケースで行います。また、ワンちゃんをセットする方向についても、ポールの1本目に向けたり、2本目に向けたり、多少異なる角度に向けたりするなど、初めにセットされた方向に直進するという意識をワンちゃんが持たないよう様々なケースで行います。
総じて、ハンドラーは、ワンちゃんに対して補助動作が入らないよう注意しながら作業を行います。

2x2理論においては、完璧な単一障害のパフォーマンスを作り上げることが重要なカギとなりますので、できるだけこの工程には時間を割いて丁寧に行います。(3日から5日程度)

3.2.連続障害としての2x2

次に、連続障害としての2x2について考えてみます。

初めて2x2を1セットから2セットに増やす場合、2x2の間隔は1.5m程度の距離を取って配置します。

図5

それぞれの2x2は直線上に並ぶよう配置し、間隔については徐々に狭めていくことになります。ただし、間隔を最も狭めた状態でも80cmを下回らないように注意します。
これはワンちゃんに、2x2の2セットを2つの障害として認識させ続ける必要があるためで、間隔を2x2と同じ60cmにしてしまうと、2x2の2セットを2つの障害ではなく4本のポールとして認識してしまう恐れがあるためです。

2セット目の導入については、まず図5のD1の地点(リワードから離れた側の2x2の間)にワンちゃんを置き、次の2x2を狙わせることから始めます。2x2の間に置かれたワンちゃんは、次の2x2のみ視界に入るため、2x2が1セットのときと同じ感覚で次の2x2をクリアすることができます。
その後、D2、D3のように少しずつワンちゃんを後退させ、ワンちゃんの視界に1セット目の2x2が入るようにします。この工程を経ることにより、ワンちゃんは最初の2x2を単一障害としてクリアし、リワードラインの先にある次の2x2を見つけ、同様に単一障害としてクリアするという感覚を身に付けることができます。

ワンちゃんがD3の位置から2セットの2x2をクリアできるようになったら、単一障害と同様に1時から11時までの角度で7m程度離れたところから100%クリアできるようトレーニングします。

3セット目以降はこの繰り返しとなります。

4.認識の検証

2x2理論の実践においては、ワンちゃんが2x2をどのように認識しているかについて、常に注視し続ける必要があります。

ワンちゃんが失敗したときに、単一障害の認識に問題があるのか、連続障害の認識に問題があるのかの見極めが大事となり、ワンちゃんの現状の認識の検証作業は図6のように連続障害を使って行います。

図6

上記作業にあたり、障害間は1m、障害とワンちゃんの距離も1m離します。
ワンちゃんはD1、D2、D3の位置から連続障害をクリアするのですが、いずれも矢印のように2x2に対して直角になる方向(つまり、そのままワンちゃんが直進すると失敗になる方向)にワンちゃんを向けて作業を行います。

D1のワンちゃんが最初に③と④の間を右から、D2やD3のワンちゃんが最初に②と③の間を左から通過してしまう場合、これは失敗ではありますが、いずれも1セット目ではなく2セット目の2x2に正しくエントリーしていることになりますので、単一障害ではなく連続障害の認識の問題ということになります。

一方、D1のワンちゃんが②と③間を右から、D2やD3のワンちゃんが①と②の間や③と④の間を左から通過してしまう場合は、いずれも2x2を逆方向からエントリーしていることになりますので、こちらは単一障害の認識に問題があるということになります。

当然、後者の単一障害の認識不足による失敗の方が問題となり、これは単一障害の認識が正しくできていない状態で連続障害へ練習の段階を引き上げてしまっていることを意味しますので、できるだけこのケースが発生しないように、単一障害のトレーニングを徹底して行うことが大切になります。

5.さいごに

2x2理論においては、ワンちゃんはスラロームを「12本のポール」ではなく「2x2という障害が6セット」と認識しているため、その認識が続いている限り、スラロームのエントリーを逆から入ったり、2本目から入るということが、「そういう障害ではないから」という理由で、起こり得ないということがわかります。
認識を維持し続けるためにも、メンテナンスとして、定期的に80cm間隔3セットで2x2の連続障害の練習を行うことが効果的です。

2x2理論は、新しくスラロームを覚えるワンちゃんでも10日程度でスラロームのトレーニングが終了し、終了した時点で3度レベル以上のエントリーが確約されるので、他のスラロームのトレーニング理論に比べて、かなりコストパフォーマンスに優れた理論だと言えます。

また、既に別の方法でスラロームを教えているワンちゃんに対しても、エントリーの強化・矯正としての利用が期待できます。
この場合、いかに2x2をスラロームとして認識させずにワンちゃんに導入していけるかがポイントとなり、ワンちゃんが2x2を、これまで知っているスラロームとしてではなく、全く新しい障害として認識しクリアできているかを常に意識して作業する必要があります。
そのためにも、新しくスラロームを覚えるワンちゃん以上に単一障害のトレーニングを数多く行い、2x2を別のクリア条件を持った単一障害ということを意識させるようトレーニングします。

本稿がワンちゃんのスラローム技術向上の一助となれば幸いです。