昔 為替市場のメイン指標はアメリカの貿易統計だった
金曜日に、注目(といわれていた)雇用統計が発表されましたがNFPR(非農業部門
雇用者数)はほぼ予想通りの65.1万人の減少となり、絶対水準としてはかなり悪かった
もののこれが追加の材料とはなりえずNY市場は前日比あまり変わらずで終了しました。
ところで、近年のアメリカの経済指標で一番市場が注目してきたのがこの雇用統計ですが
私ごとで恐縮ではありますが1987年僕が為替市場にデビューしたころ (当時プラザ合意が
あって円高が進み日経平均が38000円の最高値に向かい始めたころ)のメインベントは
アメリカの貿易収支の発表でした。
それはつまり強烈な円高ドル安が進行したころで、その頃日本はバブル景気にわき始めた
わけなのですが、アメリカ経済はそのころも不安視されていました。
その不安の理由とは、すでに巨額になっていた(政府の)財政赤字と貿易赤字です。
これらを称して双子の赤字といわれ、実際に1987年のブラックマンデーがおきた原因で
あったといわれています。
思えばその頃からアメリカ人は自分の生産以上の消費をしていて、その消費をする
ために借金をすることをいとわなかったわけで、そんなことを20何年もやっていればそれは
そのうち破綻もするだろうといってしまえばそれまでなんですが・・・
ところで、何故最近は雇用統計なのかといえば、その結果が中央銀行の金利操作の
最も重要な判断材料となるからなんですね。
まず、国家が経済運営をする際、最も重要視するのが雇用情勢です。
えっ?日本政府を見ると労働者のことなんか全然考えていないように見える?
確かにそうかも知れませんが、振り返れば日本が雇用問題を抱えるなんてこと、実際
去年それが表面化するまでは何十年もなかったわけです。
それは内定氷河期などといわれていた時期もありましたが、真剣に仕事がどこにもない
なんてことはなかったわけで、まぁ政府はその辺を気にする必要がない時代があまりにも
長く続いたということなのでしょう。
しかし、いま政治不安というか不信感がここまで高まっているのは、実際に失業者が
出ている以外にも、今失業していなくても、何時か自分も失業するかもしれないという
不安感が、国民全体をいらだたせているのかもしれません。
治安の不安と雇用情勢は、統計的には完全に一致するわけではないとはいうものの
潜在的に皆がいらだっているような感じを、最近強く感じるところですから、政治の最終
目標の一つはやはり雇用の確保なんですね。
つまりこの数字が悪化したときにこそ、政府は財政をいじり、中央銀行は利下げを検討する
最大の動機がはたらくというわけです。
更にいえば雇用が不安になれば内需は弱まりインフレ圧力も低下するわけですから
雇用関係指数の悪化は中央銀行の金利政策に深くかかわるのです。
よく為替のために中央銀行が金利操作を考えるような話をしますが、中央銀行にとって
金利操作は実は極めて国内問題であるわけです。
とくに多くの投資とは関係のないアメリカの一般国民は為替レートなどどうでもよい代物で
あったりします。太平洋や大西洋までものすごく距離があって国境など全然意識していない
多くのアメリカ人がいるわけです。
むしろ、住宅ローンやカードローン金利の上下はその消費における決定要因として
国民にとってより身近で重要な問題であるわけなのですね。
トリシェさんが為替市場を意識しないというような話もありますが、元来そういうものなのです。
グリーンスパン議長は市場と対話をした名議長であるという評判が昔ありましたが、
それは伝統的には異端な部類にはいったわけです。
ただし、小国の場合、特に食料の自給率が低かったり不安定であったりする国では、それは
国民の生存の問題になりますので、そういった国は例外的に為替政策として金利をいじります。
しかし、実力以上の金を集めるための高金利政策などをとったのちに、いったい何が
起きたかといえば、アイスランドや、今の東欧を見ればそれは明白でしょう。
こういった金利変更によって為替がガンガン動いてきたここ数年の状況は、その国の
金利の絶対水準自体が動いたこと以上に、スワップ金利とかいう、通貨間の金利差に
着目した取引は主流であったために、雇用統計が為替市場を動かしたということになるでしょう。
これは、上に述べたような主要国の中銀の基本スタンスとはまったく異なりますが、市場が
それで動いていたことはたしかです。
ただし、最近のポイントは、肝心要であったその金利差がどんどんどんどんなくなってきて
しまっちゃったことにあるわけです。
そんな中で、金利差稼ぎのキャリー取引というものがそのそ物存在意義を失っちゃった
現状では、ひょっとすると今後は、雇用統計が、新聞の大きな話題になったとしても、
市場へのインパクトに関しては従来の指標としての重要度は後退していくことが予想されます。
では、その後に何が来るのでしょうか?
ここで、最近のドル円のドル高円安をみて、その基調にドル不足があるという話の
さらにもっと奥深くの問題・・・・
それが日本の輸出の数量の大幅な低下、すなわち貿易収支の黒字幅の大幅低下
(今年になって赤字になってきています)が、非常に大きなトレンド変化の大もととなるべき
大きな大きな構造問題になっていそうな、そんな予感がいたします。
それでは、貿易収支や経常収支によって、通貨の交換価値はどのような影響をうけるのか、
基本的な仕組みを、後日お話ししていくことにいたしましょう。
