今、世界でも一つの事件になっているEBSで行われたエキシビジョンバトル「Tight Eyez vs Bboy Junior」について、僕の見解を話させて頂きます。

また、色々なご意見や指摘はあるとは思いますが、あくまでも僕個人の意見であり、この場に居ただけでなく、その後のTight Eyezとのやり取りや世界の仲間とのやり取りの中で僕なりに感じ、僕なりに思う事をまとめました。




先日、KRUMPのWORLD CHAMPION SHIP「EBS 10th Anniversary」がドイツで開催されました。
僕はこの大会で行われた“Tight Eyez vs Bboy Junior”のエキシビションバトルを生で見ていました。

今、そのバトルの中で起きた出来事により、'Tight Eyez'にの対応、'KRUMP'と言うstyleへの疑問、また、“STYLE vs STYLE”における論争が飛び交っています。

このバトル映像の一部始終がすでにフルで上がっています。
 

 

 

 

 

 

まず、向き合った時点での二人の空気感、キャラクターが全く違うのが見て取れますね。
Bboy JuniorがHAPPYな空気感を放つのに対し、Tight Eyezはいつもと同様に本気のバトルモードでKILLしに来たというような雰囲気でした。

終始バトルもその空気感の中で行われました。
バトル自体は18分くらいでしょうか...
このバトルの中で後半部分に終わらせようと握手を求めたBboy juniorに対して、Tight Eyezが跳ね除けて更にKRUMPを繰り広げます。

タオルを使って動くTight Eyezに、そのタオルを取ろうとするBboy Junior。
かがんだ彼の後ろからTight Eyezがジャンプして引っ張るような体勢になり、そのままフロアに入ったり逆立ちする形となったBboy Junioに蹴りの仕草を見せたかったTight Eyez。
しかし、その蹴りがそのまま入ってしまった...と言う訳ですが。。。
もちろん、本当に思いっ切り蹴り飛ばした訳ではなく、蹴る仕草がそのままタイミングよくJRとの動きとリンクしてしまいそのまま蹴りが入りました。・・・ただこれは蹴りを入れると言うよりもソフトに跳ね除けるようにですが、でも接触はしてしまっています。

この瞬間、近くで見ていた人たちは、その一連の掛け合いのような互いの行為にエキサイティングしている人と、一瞬空気が止まった人に別れていました。
僕は遠目から全体を見ていたが、一瞬凍り付いたのは間違いありませんでした。
「あー入っちゃった・・・」

これは、KRUMPのバトルの中ではある行為でして、タッチやプッシュ、小さな突っぱり合い、シャツを引っ張る行為などは、互いの掛け合いであり、表現の一種として受け入れられる部分がありますが、この他ジャンル同士のバトルに関してやっていいことなのか?って言うのが、みんなの頭をよぎったと思います。

そのままバトルは続き、外野からのヤジもあって、一旦二人の話し合いで握手して終了となり、最終的にBboy Juniorがマイクで一言トークしてくれました。

「これは違うスタイル同士のバトルであって、KRUMPはタッチOKでBREAKIN'はタブー。
まさかプッシュされるとは思ってもなかったけど、これはKRUMPイベント。
ちゃんと理解している。だから問題ないよ。
蹴られて倒れたのだってリアクションであって、これは同じジャンルじゃないのはお互いに分かっている。
リスペクトしてる。」
と、紳士的な対応をしてくれました。

これが会場を一旦落ち着かせたのは本当に感心させられました。
彼の懐の大きさと経験値や今の立場からくるものだと思います。
終わった後の控え室でも揉めることもなく、終始和やかだったのが印象的でした。

偉大な軌跡を作って来ているBboy Juniorはミュージカリティーもキャラクターも素晴らしく、さすが、経験値の高い戦い方でした。
全てのラウンドが彼らしいアプローチで、KRUMPERとは違うバトルの組み立て方やタイミング。
ここぞっていう時の大技の完成度や盛り上げ方はエンターテイナーでした。

今回の蹴りが入った後の対応も、もしかして相手が彼でなかったら...と思うと、また違った問題に発展しかねなかったかもしれません。

もちろんTight Eyezも同じような立場ではあるかもしれませんが、性格も違えば今回の望んだモチベーションも違ったと思います。

その後、Tight Eyezeが今回の件を受けて映像をアップしていましたが、「Bboy Juniorに申し訳なかったと思っているし、その後も二人の間では和解している。」と伝えています。


ありがたいことに、Hirokingくんが日本語字幕を付けて映像をアップしてくれています。
(映像右下の吹き出し欄から字幕設定可能)






しかし、この蹴った映像だけが切り取られて先行し、SNS上でシェアされてTight Eyezが非難される事態になっています。



お互いのジャンルのルールやアグレッシブな部分の違いが浮き彫りとなり、KRUMPのKRUMPにしかないルールが他ジャンル相手に悪い方向に出てしまい、リスペクトがないように映ってしまったのはとてもショックでした。

Tight Eyezはリスペクトも持っていますし、それを彼が常日頃教えて来たことでもあり、根本的にKRUMPの土俵に来たからKRUMPで返してしまったけれど、今回のような世界が注目する中で、この映像だけではその姿勢が見て取れなかったのが非常に残念です。

ただ、これはTight Eyezだけが悪いんじゃなくて、これを企画したEBS側に問題もあったと思っています。
このような大きなエキシビジョンカード、そして異なるスタイルなだけに、慎重にルールや趣旨をしっかりと決め、起こり得る問題を予測して行うべきだったかもしれないし、これは“STYLE vs STYLE”では起こり得ることでしたね・・・

 


Bboy Juniorはこのバトルを楽しもうとしていたし、Tight Eyezは自分の創り上げたスタイルのイベントでレジェンド対決となれば、気を抜いて楽しむなんていうスタイルではなかったと思います。

Tight eyezも言う通り、
“KRUMP is not HIPHOP”
“KRUMP is KRUMP”
なんですね。

KRUMPの可能性を広げるために、僕もTight Eyezもオールスタイルバトル、HIPHOPバトルなど、他ジャンルのバトルにもトライしています。
僕もTight Eyezもそのルールにのっとって戦っているつもりです。

だけど、今回はお互いのジャンルのレジェンド同士のエキシビションバトルであって、そこにリスペクトはあるけれど、どちらかのルールに沿ったり寄ったりしてバトルするつもりもなく、レペゼンBREAKIN'、レペゼンKRUMPだったんだと思います。
もちろん、その結果、KRUMPでは当たり前のことが、ただただ悪いイメージに映ってしまって、他ジャンルの方々にとっては理解し難く受け入れられない状況となったことも事実です。

確かに、絡みの流れからどちらのROUNDとも言えない流れで、相手もMOVEし始めた中に蹴りが入って、邪魔したような見え方になってしまいました。
それに関して自体は単純に良くなかったかと思います。

だからと言って、KRUMPERみんながバトルする時に、相手に蹴るような行為をする訳では決してありませんし、それはパフォーマンスやキャラクター、そういうコンセプトのMOVEの一種で、本当に蹴り飛ばしてやろうと思って故意に蹴りにいくなんて事はしません。


「HIP HOPにはルールがある。文化を尊重すべき。」
と言うたくさんの書き込みも見ましたが、じゃあKRUMPの文化を理解している人がどのくらいいるでしょうか?
これをそのKRUMPの一面ということも知ってほしいきっかけになったかと思います。
リスペクトがないからではなく、お互いを高め合う一つのジェスチャーの動きからくるものなんです。

今回のことは非常に残念で複雑な形で動いていますが、良くも悪くも「KRUMPとは・・・」と改めて世界に発信する結果となりました。
そして、“STYLE vs STYLE”の違いや難しさも改めて浮き彫りになった今回でした。


これを機にKRUMPは厳しく見られる部分も出てくると思いますが、決して傷つけるためではなく、自分を高めるものですし、自己表現のエナジーを最大限に見せるスタイルだと思っています。
Tight Eyezも改めて言っていますが、銃や喧嘩を使わずに色々な想いを解決する手段の一つでもあるのがKRUMPで、感情をリアルに表現するものです。


Tight Eyezのしたことは他ジャンルにとってはタブーで、一概に許されるものでもないと思います。

Tight Eyezも、世界のKRUMPERに向けて「今回のことでKRUMP自体がマイナスなことになったらごめん。」と彼は言っています。
「ただ、だからって世界から来るHateのメールやレスポンスには謝らない。
俺はBboy Juniorには謝罪した。」
っていう、まぁごもっともな見解ではあります。。。

ただ、今回のバトルの中でこの行為をやって良かったのか、悪かったのか・・・
それを外野が判断するのではなく、彼らの発言や動向で見えてくるのかなとも思います。

僕はTight Eyezではないし、元々がHIPHOPで育っただけに、彼を理解するには簡単ではなかったです。
僕だったら土俵が違うのであれば、こういう表現はしないと思うし、使い分けます。
ですが、自分が見てきた世界のKRUMPはもっと危ないものもありましたし、危険な行為ギリギリなものもたくさん見てきました。

 

 



 


 


 


“自分たちはKRUMPのコミュニティだけでやってる”と言う人は僕の意見は通じないと思いますか、僕らはHIP HOPにも生かされている部分、寄り添っている部分あると思っています。

僕らももっと自分たちの事以外も学ばないといけないし、リスペクトを持って接し挑んでいかなければいけません。
そうやって繋がり、またリスペクトしてくれてる人がたくさんいるのも知っています。


今、RIZEの動画が改めて取り上げられ、本質である部分がクローズアップされていますが、この根本的な「KRUMP」という文化やスタイルがちゃんと他ジャンルの方々に伝わっていたのか?理解されていたのか?
そこも問題点であったかもしれません。
つまり、伝わっていないし、理解も薄い現状が分かります。


 

 

 

起きてしまったことに対してあーだこーだ言ったり、謝罪しろ!などと外野が騒ぎ立てていても、最終的には当人達の問題であり、今後、このような事が起きないようにKRUMPサイドも“KRUMP is not HIPHOP”である事を発信しなければいけないし、また逆に他ジャンルと寄り添う事も必要だと思っています。


僕は、何年も前から日本のKRUMPERには自分の声で、他ジャンルとのバトルの時はそのジャンルへのRESPECTを忘れてはいけないし、土俵を考えて100% KRUMPルールで望んではダメ。
KRUMPで許されるタッチも当然ダメと伝えてきています。

もちろん、みんな、多少の表現的なソフトタッチはあっても、故意的なタッチは絶対にしないし、それは当たり前の事だと認識しています。
それを踏まえて他ジャンルの方と戦ってる子達がほとんどです。


総合的に、今回の件の自分の見解としては、他ジャンル同士のバトルで、レペゼンKRUMP vs レペゼンBREAKIN'の“STYLE vs STYLE”だったため、そこで生じる違いがぶつかり合ってしまったが、当人同士は理解しリスペクトし合っている事で、決して故意や悪意で相手を傷付けようとした訳ではなく、エキシビションバトルでの熱さと駆け引きによるパフォーマンスも入っていたにしろ、他ジャンル相手にやり過ぎてしまったのは良くなかったのだと思います。

僕の意見としては、まだまだKRUMPのスタイルや文化を深く理解されていない現状で、これを見て不快に感じた方が多数いる事も受け止めているし、そこは申し訳ない想いもあります。

ただ、Tight Eyezは僕たちから見ても、やっぱりKRUMPはもちろん、人としても、やる事成す事全てにおいて卓越していて理解不能なくらい超人で、彼はKRUMPにおける事や、バトルに関しては一切の妥協も許さず、常に100% KRUMPで臨む事を知っています。
だからこそ僕は、あれは彼らしいバトルだったと感じています。
そして、それに自分のスタンスを崩さず最後まで紳士的に戦ってくれたBboy Juniorに拍手を送りたいです。



ダンスという表現において
ジャンルは違ったとしてもKRUMPもBreakinもネガティブなものではないはずです。
自己表現であり、会話であり、それは絶対ポジティブなものであると思います。
 
今回のstyle同士に起こった最悪のケースを今後起こらないためにどうしていくのかということが大事なことですね。
 
 

これが、僕が見て感じた意見であり、あくまでも僕個人の視点です。