書籍を「裁断→スキャン」してデジタルデータ化する行為を、俗に「自炊」と呼ぶ。この自炊ノウハウや細かいTipsを紹介する
前回まで、一通りの工程を説明した。今回はScanSnapの取り込みユーティリティ「ScanSnap Manager」の各種補正機能の使い方や、スキャン後のチェックポイントなどを紹介していこう。
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ScanSnapには、読み取った原稿の向きを自動補正するメニューが2つ用意されている。1つは「傾き補正」で、もう1つは「向き補正」。前者はプラスマイナス5度の傾きを修正するもので、後者は原稿を90度、180度、270度と回転してくれるモードだ。
傾き補正は、紙送り時に微妙に斜行してしまった原稿を真っ直ぐにするのに役立つ。本のスキャンでは、DTPが本格的に普及する前の書籍、具体的に言うと1990年代以前の発行書籍ではページに対して写植そのものがナナメになっている場合も少なくないので、この機能は重宝する。また向き補正については、取り込み時にページを90度回転させて短い辺から取り込まれるようにしたほうが短時間で取り込めるので、それを取り込み後に一括回転させる際に便利だ。
ただ、筆者はこれらの補正機能はあまり使用していない。後述する紙のセット方法さえ間違えなければ、本はある程度方向が決まっておりズレる可能性が少ないこと、また取り込み後にAcrobatで一括回転させることが容易だからだ。とくに傾き補正については、イタリックの文字列を傾いていると誤認して文字が直立するよう補正することもある上、扉ページなどで英文をタテにしているページを横に90度回転させてしまうなど、あとから一括修正する際にイレギュラーな作業を強いられることが多いのだ。
もう1つ、マンガを取り込む場合、傾き補正をオンのままにしておくと、コマの角度や背景の斜め線に過敏に反応してページを傾けるなど、不都合が起こることが多い。マンガをスキャンする際は、向き補正はともかく、傾き補正はオフにしておくべきだろう。
余談だが、エプソンのドキュメントスキャナ「ES-D200」では、回転方向をマニュアルで90度、180度、270度から指定できるメニューが搭載されている。個人的にはScanSnapにも採用してほしい機能だ。
●スキャンのコツ――取り込む向き
ハードカバーの本を裁断すると、裁断面は真っ直ぐになるが、もう一端はカーブを描いた状態になる。同じように、厚みのある本を裁断した場合などは、横から見ると台形になってしまうことがある。これをそのままフィーダに載せてスキャンすると、微妙に傾いた状態で読み取られてしまう。前述の傾き補正で直すことも可能だが、万能というわけではない。
こうした場合は、90度回転させて横向きにするとよい。本だった時のページ上下をガイドに沿わせてスキャンする格好になるので、傾くこともなく、また辺が短いため読み取り時間も短時間で済む。取り込んだファイルは「ScanSnap Manager」の向き補正で回転させるか、もしくはAcrobatの「ページの回転」機能を用いて回転させるとよい。
縦向きにフィーダに載せると、スキャン後に回転させる必要はないものの、辺が長いため読み取りに時間がかかる
横向きにフィーダに載せると、スキャン後に回転させる必要はあるが、辺が短いためスピーディに読み取れる
●フォーマットはどうするか
話がやや前後するが、スキャン時のフォーマットはPDFもしくはJPGを用いる。JPGの場合はZIPにアーカイブすることにより、iPadやKindleで閲覧が可能になる(Kindleでの表示方法については次回説明する。また、iPadは用いるアプリにより対応する場合とそうでない場合がある)。
PDFとJPGのどちらがよいかについては、ケースバイケースである。筆者は基本的にPDFに変換しているが、画像処理ソフトなどでの加工が前提であれば、JPGで取り込んだほうが工数が短縮できるかもしれない。もっともPDFであっても、Acrobatから[ファイル書き出し]-[画像]-[JPEG]を選択することによってJPGファイルに書き出せるので、手間さえかければ修正は問題なく行える。
むしろ、電子書籍端末ではなくPCなどで読むことも視野に入れているのであれば、そちらのビュワーの仕様も確認しておいたほうがよい。PC用のコミックビュワーソフトであればアーカイブしたZIPファイルに対応している場合が多いが、普通の画像ビュワーでは対応しない場合もあるからだ。
●紙送りに失敗する場合のチェックポイント
スキャンの際、どれだけきちんと紙をさばいてセットしていても、決まったページで必ず二重送りが発生する、あるいは詰まってしまう場合がある。ScanSnap S1500は超音波センサーによる重送検知機構がついているため重送を見過ごすミスはほぼゼロといってよいが、紙の質などの問題で、何度やってもうまく読み取れないことはある。
このような場合には、まずセットしている枚数が多すぎないか疑ってみる。ScanSnap S1500は最大50枚がセット可能だが、紙の厚みによってはこの限りではない。枚数を減らすとあっさり二重送りが解消する場合も少なくないので、まずは無理に枚数をセットしすぎていないか確認する。
それでもダメな場合は、裏表逆に読み取ってみる、90度回転させてみる、わざと折り目をつけてページが分離しやすくする、といった方法が考えられる。このほか、あまり積極的にはおすすめできないが、紙の先端を濡らしてドライヤーで乾燥させゴワゴワにすることで、紙が通りやすくなることもある。もっとも、ここまでくると継続読み取りをオンにして1ページずつ通したほうが効率的な気もする。
ちなみに、自炊をしているとけっこうな枚数を読み取るため、パッドユニットなどの交換が必要になることもある。パッドユニットの交換周期は5万枚となっているので、100枚=200ページの本に換算すると500冊だ。意外と早い。また、単にローラー部が汚れているといった場合もあるが、この場合はメガネをふく布などを用いて清掃する。PFUのWebサイトに詳しい情報があるのでご覧いただきたい。
個人的におすすめなのは、最近量販店でよく見かけるクリーナー「CyberClean」だ。スキャナ内に溜まった紙の粉を除去するには、エアーダスターで吹き飛ばすよりもこちらのほうがはるかに効果的。メーカー推奨の方法ではないが、いまのところ不具合などはない。数百円程度で入手できるので、ScanSnapのオーナーの人はぜひ試してみてほしい。
●完成したファイルのチェックポイント
スキャンが完了すれば、読み取った原稿、つまり元の本は不要となる。ただし処分してしまったあとに読み取りミスに気がつくといったことがあると泣くに泣けない。かといって1冊読み取るたびに全ページをチェックするのは、大量の冊数を取り込んでいるとなかなか厳しいものがある。よくあるミスと、そのチェック方法を見ていこう。
ページの抜けについては、超音波センサーによる重送検知があるS1500を使っている場合は、あまり気にしなくてよいというのが筆者個人の印象だ。なにせ表裏で2枚の紙を張り合わせた表紙すら重送として検知するくらいなので、重送が検知されるたびにきちんとセットし直してやれば、抜けが発生することは皆無に等しい。どうしてもという場合はPDF上でのページ数と読み取った枚数をカウントしてやるとよいだろう。ただし白紙自動削除をオンにしていると計算と合わずに混乱することもあるので注意したい。
もしスキャン時に重送が検知されて原稿をセットし直す場合は、何枚か余分に戻って取り込んだ方が安全だ。ページがダブっていればあとから削除すれば済むし、実際にページをめくっていても「あれ、また同じページが出てきた」で読み飛ばせば済むが、欠落したページを蘇らせることはできないからだ。
ページの斜行などは、画像補正ソフトなどを使えばいくらでも直す方法はあるので、あまり気にしなくてよい。あとから修正するのは手間はかかる上に画質も低下するので、なるべく取り込み時に直しておくのが王道だが、ページそのものが抜けているよりははるかによい。
むしろよくあるミスが、フィーダにセットする裏表を間違えて、ページ順を逆にスキャンしてしまうことだ。本来はページが1→2→3→4→5となるはずが、裏表逆にセットしてしまったがために5→4→3→2→1の順に取り込んでしまったという問題である。
ページが少なければAcrobat上でドラッグして入れ替えれば済むが、これを数十ページ単位でやってしまうとシャレにならない。ページが47→48→49→50ときて次に51ページが来るかと思いきや、50→100→99→98とカウントダウンを始められた日には、ものすごい徒労感と絶望感に襲われる。裁断機を使った場合はカット面があまりにも鮮やかすぎるため、どちらがカットした面でどちらがページの端だったか分からなくなることから、こうしたミスが発生しやすい。
なので、全ページとはいわなくとも、フィーダにセットした際のブロック単位では、ページの順序をチェックしておくことをおすすめする。またこのことは、同時にセットできる枚数が多いS1500を勧める理由の1つでもある。同時にセットできる枚数が多ければ、セットの回数も少なく、ミスをする確率も低いからだ。
●自炊した書籍データの保管方法を考える
スキャンについては以上だが、最後に、取り込んだデータの保管方法について考察してみよう。
本を自炊したあとに発生する可能性がある最大の事故としては、電子書籍端末の紛失・破損やHDDの故障などでデータが消失してしまうことが挙げられる。Kindle Storeなどで購入した出来合いの電子書籍であれば、端末を紛失・破損しても再度ダウンロードできる場合が多いが、自炊したファイルはそうはいかない。なくなったらおしまいである。
対策としては、1つには電子書籍端末にはデータを移動させるのではなくコピーすること。自炊した本はDRMがかかっているわけではないので、HDDに残したまま電子書籍端末にコピーすればよい。これはまあ当然だろう。DVD-Rなどへのバックアップも、データが一定量まとまるたびに行っておくべきだ。変にジャンル分けをするよりも、時系列でバックアップしていったほうがよいだろう。
もう1つは、データの保存先に冗長性の高いドライブを用いること。具体的には、アイ・オー・データ機器の「LANDISK」シリーズやバッファローの「LinkStation」シリーズといったLAN接続HDDのうち、RAIDに対応している製品を指す(ただしRAID0は除く)。ちなみに筆者が現在使用しているのは、アイオーの「HDL-XR2.0」と、バッファローの「TS-X4.0TL/R5」である。いずれも法人向けの4ドライブ搭載モデルで、自炊データの保存としては明らかにオーバースペックなので、価格重視で購入するならRAID1対応、予算に多少余裕があるようならRAID5対応の製品をおすすめする。
さらに万全を期すのであれば、これらのLAN接続ハードデイスクを定期的にバックアップしてくれる、USB接続の外付HDDも欲しいところ。RAID1以上のレベルのHDDでは1台のドライブが故障しても残りのドライブからデータを復旧させることが可能だが、落雷などによって全ドライブが壊れてしまう可能性はなくはないし、それ以外にもファイルの加工中に誤って削除してしまう可能性もある。
1週間に1回程度、LAN接続HDDから外付けのUSBHDDに全データをコピーする設定にしておけば、データを消失する危険性はかなり低下する。もちろんそのためには、LAN接続HDD側に外付ドライブへのバックアップ機能があることが前提になる。
次回は、KindleやiPadなど、電子書籍端末ごとの自炊データの扱いについてみていきたい。【山口真弘,Business Media 誠】
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