研究を始めてから三週間、初めて事件の話が出た。高輪兄弟が、自分から「実は去年うちの会衆でたいへんなことがありましてね」と語り始めたのだ。
いくつも驚くことがあった。まずびっくりしたのは、事件当時、荒木兄弟がバプテスマを受けた正式の証人ではなく、私と同じ研究生の立場だったということだ。多くの雑誌に「入信して3年半」と報じられていたが、それは研究生になってから3年半という意味だったらしい。高輪兄弟の言葉を借りれば“抵抗中”であったことになる。なぜそんな荒木兄弟が、あれほど強硬に"輸血拒否”を叫んだのだろう。
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「しまーい、わたしミシンのベルト欲しいんだけど、1メートル下さいって言ったら、なんだと思われるから、半端で」
「ムチかー、ベルトがいいのよね」
「ねえねえどうしたの姉妹」
「姉妹がね、ミシンのベルト買いたいんだって、ムチするのに。でも1メートルじゃ変に思われるっていうの」
「それじゃ、2メートル買ってあたしと半分こしましょうよ」
「ほんと、姉妹?よかったあ」
手を取り合って喜んでいる。子供たちにとっては戦々恐々たる会話だ。
兄弟たちも車座になって雑談していた。話題はエイズについてで、みなニコニコしている。
輸血によって感染したり、同性愛が原因になったりするため、彼らはこの病気を、神からの警告と見ていた。エホバの証人は、エイズの流行を世界で一番喜んでいる人達だ。