『結婚とは当人同士のものではなく、家と家との結婚なんだよ』…昔話に聞こえるかもしれないけど。
間違いではないよね。『お義父さん=おとうさん』だし『お義母さん=おかあさん』だし。
父ちゃん母ちゃんが増えるわけだ。家族が大きくなる。

交際から結婚にいたる過程で、僕は彼女の両親に『エホバの証人』の件を直接自分の口で伝えたことがなかった。
もちろん彼女は僕の過去を知っていたし、今は活動をやめていてもう証人の世界に戻る気がないこともわかっていた。ただなんとなく二人の間でその話題はタブーのような、僕も敢えて話題にすることなく(無意識的に逃げていた)日々が過ぎていた。僕の家族の公然の秘密は彼女を介して、彼女の家に伝えられた。
「結婚は当人同士のものだし、本人が宗教の世界に戻るつもりが無いなら親御さんがどうであろうと構わない。」今から思えば何と寛容なありがたいことばだろうと思うが。
恥ずかしい話だが、その当時の僕にしてみれば『当たり前やろう、親のことなど関係ないわい』ぐらいに思っていた。
だから、あの時。それまで自分をぼんやり覆っていた霧が急に晴れて、
樹海の中を右も左も分からないまま彷徨っていたのに、急に視点が俯瞰に変わり、自分がいた森全体を見渡せるような感覚になったとき。
僕は自分を恥じた。きちんと自分と自分の家族の宗教のいきさつを家族に話していないことを恥じた。
だからお義母さんに自分の過去を打ち明けた。
大事な家族に嘘をついたままでいるのは卑怯だと思ったから。
それは血の繋がっていない他人が家族になる過程だった。
『家族』って時間をかけて徐々に『家族』になっていくものなのかもしれない。