その年も盆休みに嫁さん家族と旅行に行く計画をしていた 葬式が終わって半月ほど経ち 『今年の旅行どうする?』「せっかく予約入れたんだしいこうか」ということで お骨の番をしたいという義母と産まれたばかりの次女と嫁さんが留守番をすることになり 僕等は海に出掛けた 嫁さんが子供の頃毎年家族で行っていた思い出の海水浴場だ 去年はおばあちゃんも来ていた…

その夜のことだ 夕食を終え 皆で一杯飲みながら団欒のひととき 僕は心地よく眠くなってうたた寝をしていた そのユメの途中 忘れていたアレが僕を襲った あの金縛りだった 霊を感じるとかじゃなく 純粋な得体の知れない恐怖感だけが身体を支配しようとする 言葉にならない声を発してその恐怖感を払いのける 『わあ!!』…目が覚めると恐怖感はどこかに消えた…

まわりの家族はびっくりした うたた寝していた娘婿が大声あげて飛び起きるのだ そりゃ心配するだろう
『夢の中に泥棒が出てきて 追いかけててん あービックリした』と言い訳をした…

若い頃よくうなされたあの感覚のままだった 『エホバ!!!』と叫ばなかったのがせめてもの救いだ…
ショックだった 嫁さんと出会って以来忘れていた感覚 自分が金縛りに遭うことすらそのときまですっかり忘れていたのだ…


ヤミが僕を見て嗤っていた
『よう…最近調子いいみたいだな…結婚して子供までできて…うまいことやってるみたいじゃん…でもなオレは知ってるぜ…お前の引き出しの中の過去を…うまく振る舞っててもな…ことあるたびに出てきてお前の脚を引っ掛けてやる…どうせお前はエホバの子供だよ…』


その瞬間 僕の闘争心に火がついた
『お前がその気なら やってやるぜ 徹底的に戦ってやる 僕を巣喰うヤミの正体を暴いてやる その暗闇に僕のほうから乗り込んでやる』
…逃げまわるのはもうお仕舞いにしよう