あの人に 逢いたい

堪らなく 逢いたい

 

あの日 声を掛けてくれたのは あなた

風に飛んだ 帽子を 取って欲しいと

ただ それだけ

 

帽子は コロコロと転がり 捕まえるのが大変だった

砂を払って 彼女にとどける

ただそれだけの 出会い

 

笑顔が素敵だった 申し訳なさそうな顔が 素敵だった

可愛いと思った 

ただそれだけ

 

ありがとう その言葉が 可愛かった

帽子を受け取り 彼女は 再び帽子を被った

ただそれだけ

 

後ろ姿を見ていた 

何事も無かったように 彼女は去って行った

 

ただそれだけなのに 胸が熱くなった

砂の上に 去って行く足跡が 残った

しばらくして 彼女は 遠く どこかに消えた

 

僕は その残った 足跡の上を

辿るように 歩いた 意味もなく

 

会いたい もう一度 逢いたい

意味もなく そう思いながら 砂をけった

誰も知らない 一瞬の 恋心だったのだろう