赤とんぼ まだ恋とげぬ 朱さやか   青陽人

 

祖父の句の中で 一番好きな句だ

すでに 祖父が亡くなった歳を 超えた

 

すっかり 秋の虫が 鳴き始めた

それを聞きながら 静かに酒を注ぐ

こんな時は ぐい吞みではなく 盃が良い

 

片口は 京都で買った 鳥獣戯画の絵柄

一品もので 主の息子が作ったものだという

 

酒は 佐賀の辛口吟醸

名水百選の 清水の滝が懐かしい

 

彼女と二人 深夜の祇園川に出た

ホタルの乱舞は 二人だけのものだった

口づけを交わしたが それが最後だった