3人の軌跡
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「ごめん。すごい渋滞しててさ。久しぶりなのに」

私は笑顔で

「携帯でヤフオクとかしてたんで全然大丈夫です」

と答えた。

本当はいらいらしていた。
一時間も暇過ぎて、ヤフオクで、冷静に考えたら特に要らない服を落札してしまっていた。


吉本もコーヒーを一杯飲み

「行こうか」

と伝票を持って立ち上がった。

私も立ち上がると

こっちを見て
「なんか大人になったね。きれいになったね」

そういうことを言わない人だったから
私は吉本の顔をじっと見てしまった。

今まで見たことの無い優しい顔で私を見ていた。
照れ隠しに私が笑うと
吉本はそのまま歩いて行き会計を済ませ

「何食べたい?でも正月だからどこもやってないよね」

「そうですよね」

と答え、吉本の後ろについて歩いた。


ロビーを出ると目の前に吉本の車がとまっていた。

「駐車場入れる時間無いと思ったからここに停めちゃった」

一年ぶりに見る吉本の車。

BMW7シリーズ。

助手席に乗ると

「お台場行こうか」

と車を走らせた。


「ここくらいしかやってないよね」

ラボエムに入ることになった。

いつも私の彼の話を聞いて来るが

この時は彼氏のことは何も聞かれなかった。


吉本が久しぶりにメールをくれたきっかけになった番組の話、最近の仕事の話をした。


食事を終えて駐車場に行き車に乗った。

「俺と話してる時気使ってない?」

「私、人見知りだから、15回くらい会わないと慣れないんですよー」

冗談っぽく、でも本当のことを言った。

「15回?慣れるまでに15回だったら付き合うには何回会えばいいの?」


今まで二年間、一回も口説かれなかったから安心して
いつも食事に行っていたのに、こんなことを言うなんて。

面倒臭いことになったな。

そう思い、適当に笑いながら

「わかんないですよー。15回より沢山じゃないですか」


「そんなぁ。毎週会ったとしても三か月以上かかるじゃん。」

「そうですね」

「しかも毎週なんて会えないだろうし」

ごまかして笑って返した。

「こんなにきれいになっちゃって、ほっとけないよ。」

悪い気はしないけど、吉本を好きになることは無いだろうから
困ったことになったと思った。

「あゆみちゃんは、久しぶりに会ったけど、やっぱりこいつは無いなって思ってるの?」


やっぱりも何も、
元々そんな気持ちは0%だし
今日会っても勿論恋愛感情は0%だよ。

と思ったが、私は気が弱くてそういうことは言えない質なので

「そんなことないですよ」

と無難に答えた。


「次はいつ会える?来週の週末は何してるの?」

「うーん。バイトかなぁ」

「金土日、全部バイト?」

「無い日もあるけど…」
「いつ無いの?」

「ぢゃぁ金曜か土曜で」

「分かった。どっちにするか決まったら連絡してね」

「分かりました」

いつも強い口調で強気に話をする吉本。

なのにこの時は
見たことのない、聞いたことの無い
いつもと正反対な吉本だった。

「家、目白だっけ?ナビに入れるから住所教えて」

目白は私の実家だ。

昼にメールで早稲田って言ったのに…。

でも何も言えずに実家の住所を言った。

家の前まで行くと、家に入らないと不自然だから、大通りのコンビニで降ろしてもらおう。
バカらしいけど仕方ないからそこからタクシーで早稲田に帰ろう。

そう思って、そのコンビニに近付いたら

「コンビニ寄るんで、大通りのコンビニの前でおります」

「え?家の前の道、結構暗いじゃん?危ないから買い物終わるの待ってるから、家の前まで送って行くよ」

面倒臭い。

「買い物色々あって時間かかるんでいいです。そんな危なくないから大丈夫です」

「時間かかってもいいよ。待ってるよ」

どうしよう…。

「本当に大丈夫ですから」

「分かったよ」

ほっ。

無事にコンビニ前でおろしてもらった。

買い物が終わったら、タクシーを拾って早稲田に帰った。

「ただいま」

彼とキスをした。

その日の出来事については特に彼には言わなかった。

1

2009年、1月1日深夜27時頃
メールが来た。

「テレビ見たよ。なんだよ、あのダイエット法って!」

同棲している彼の家で

私も自分が出ているバラエティ番組を一人で見ていた。

彼は、私が座っているソファの隣りのベッドで眠っていた。

三か月ぶりにメールして来たのは

二年前に仕事で出会った吉本さんだった。

時々食事に誘われて会っていたが
ここ一年は向こうに彼女でも出来たのか、たまにメールが来るくらいだった。

食事に行っても
食事して、車で家に送ってくれていつもそれだけだった。

久しぶりのメールに返信した。

「私だって気付いてくれたんですね!メールありがとうございます」

すぐに返信が来た。

「久しぶりにご飯行かない?」

私はずっと吉本さんに対しては
全く恋愛感情は無かったが
いつもおいしい食事をご馳走してくれて、送ってくれるから

誘われても別に嫌な気はしないし
素直に誘いを受けていた。

今回もそれと同じ気持ちで

「ぜひ!行きましょう」

と返した。

「じゃぁ今日の夜は?」
「今日って、今からじゃなくて、今から寝て起きた夜ってことですよね?」

「そうだよ。七時くらいは?」

「大丈夫です。じゃぁ今夜七時に」

「明日起きたらまた場所とかメールするよ」

そして私は先に寝ていた彼の隣りで眠った。


目が覚めたのは、一月二日の午後三時くらいだった。

待ち合わせ場所の連絡が来ているかと思って携帯を見たが
何もメールは来ていなかった。

起きたらメールするって言っていたのに、もう三時だからもう起きてるはずなのに。

不安になって私から

「今日どこで待ち合わせますか?」
とメールした。

すぐに返ってきた。

「君んちってどこだっけ?」

以前、吉本さんと会っていた時はまだ実家だったから
私の今の家の場所を知らないのだ。

実家の地名を言うか、今の同棲している地名を言うか悩んだ。

恋愛感情は無いが
同棲していることは何となく言いたくなかった。
しかし、ここで嘘をついて、実家にまた帰り送ってもらったら
そこから今の家まで自分で帰るのは面倒臭いなと思って、今の家を言った。
別に同棲してるって話してもいいや。
そう思ったのだ。

「早稲田です」

「分かった。七時に渋谷のエクセル東急のロビーで待ち合わせよう」


一応、仕事で出会った人なので、遅刻しちゃいけないと思い

六時に家を出た。

「友達と会ってくる。そんな遅くならないよ」

「そっか。気をつけてね。行ってらっしゃい」

彼とキスして家を出た。

6時50分にホテルのロビーに着いた。

「渋滞していて遅れそう。ロビーにあるカフェに入って待ってて。ごめん」

「分かりました。大丈夫です。待ってます」

カフェで携帯をいじって時間を潰した。

吉本さんは一時間近く遅れて来た。