「闇の精神史 著木澤佐登志」を読んで
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表
イーロン・マスクはなぜ火星を目指すのか?
裏
現代社会にうごめく<宇宙>という思想
第1章 ロシア宇宙主義 居住区としての宇宙
第2章 アフロフューチャリズム故郷としての宇宙
第3章 サイバースペース もう一つのフロンティア
終章 失われた未来を解き放つ
表紙裏
19世紀ロシアに生じた、ロシア宇宙主義と呼ばれる思想潮流。
分子となって銀河に散らばる全祖先の復活を唱える特異な哲学は現代に回帰し、ウクライナ神鋼の思想的背景とされる新ユーラシア主義や、テクノロジーによる不死を目指すトランスヒューマニズムに巨大な影響を与えている。
どんづまりの現実、その外部としての「宇宙」。
頭上の暗闇に、人は何を見るのか。
「土星からの使者」サン・ラーら黒人アーティストのアフロフューチャリズム、そしてサイバースペース/メタバースまでを繋ぎ論じる。
イーロン・マスクの火星伊集目標はスペースX通じて知っていたがこの本でその具体的移住計画の人数を知ることになる。2050年までに100万人
爪を立てる。
私的、勝手に考える著者の提案
(引用)
過去は生きている。
失われた記憶として、無数の別の可能性を持つ集団的な夢として、それは目覚めることのできる死者である。
死者というプロジェクト、それは他ならぬ過去それ自体に対してこそ施行されなければならない。
近代を乗り越えるのではなく、近代の夢(ただし近代自身すら必ずしも十分に意識化することのなかった夢)を救い出すことによってユートピアは達成されるのかもしれない。
ソビエトは、この近代の夢を西洋のテクノロジーとアメリカの資本によって救出しようと企てて失敗した(あるいはもっと別の原因で)ならば、私たちは別の組み立て方、(モンタージュ)を試すべきだ。
近代を構成していた要素をバラバラに分解し、個々の部品を精査し、別の組み立て方の可能性を探索すること。
こうしたアプローチによってはじめて、近代の弁証法的プロセスの外部に抜け出すことができるのだとしたらどうだろう。
時間の流れととともに忘れ去られていった、実現されなかった可能性や失われた夢。
瓦礫と塵埃の中から、その断片を掘り起こして未来の消失点から差し込んでくる一条の光りに反照左遷とする営為こそは、未来を想像することのできないノーフューチャーな現在において意味を持ちうるのではないだろうか。
長い引用はある意味本意ではないが、著者の考えている歴史観を説明するにはこうなってしまった。
歴史を知ることは<落穂ひろい>に似ていると考えている。
それは落ちていて拾わなければ<消えてゆく>存在だと考えていて、そうした本も多くあると思っている。
平たく言えば<そういうこともあったんだ>で終わる。
しかし、この本でとらえる歴史はそうではない。
歴史の中から拾い出すのは落穂ではなく、落穂も育てた農地だった。
インプラントで、白内障施術でヒトの肉体と人工物の融合が脳と記憶装置の融合、その先にあるのは人間が身体を捨てた「非肉体的存在」?
そんなに構えなくてもジュ所に受け入れていくテクノロジーだろう。
ただ言えるのはそれがよい方向に進んでいるかと言えば、一概にそうは言えずただ選択肢が増えて、その振幅幅が広がるだけと足元に戻るしかない。
少しでもそうした同意があればこの本の読み込みが必要だろう。
イーロン・マスクと言う一個人が挑戦しているテーマは群れる人全体が求めている問いのほぼ等しい感じする。後回しにしている自伝を近いうちに読んで、優先順位を知りたい。
おまけの話
ロシアの宇宙精神という本がある
その帯にはこうある
表
- 宇宙産業で競合するベゾスとマスクだが人口増を願うビジョンは共通する。
- ベゾスは「1兆人の人間が太陽系で生活する未来」の実現に向けて動く
- 「地球の人口不足」を懸念するマスクは火星への移住を本気で目指す