「資本とイデオロギー 著トマ・ピケティ」を読んで

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きわめて明瞭、かつダイナミックな書だ。

様々な歴史的経験を、息をのむような研究で鳥瞰して⒭、教訓を引き出している。

本書が教えてくれるのは、不可避なことなどないこと。

そして、ハイパー資本主義と共産主義の惨禍のあいだには、あらゆる可能性が開かれていることだ。

未来を創るのはわれわれ次第だ。

さあ、腕まくりしてゆこう。‥‥エステル・デュフロ(2019年ノーベル

格差史についての巨大な学術作品だ。

現代政治を鋭く分析し、とりわけ、ピケティの呼ぶ「バラモン左翼」の失敗と社会主義的平等主義の急進的な新プログラムを示している。

マーティン・ウルフ「ファイナンシャル・タイムス」

 

トマ・ピケティの本は常に記念碑的だ。・・・・

「21世紀の資本」が経済学者の格差観を変えたのと同様、「資本とイデオロギー」は政治学者の政治観を変えるだろう。

っフランコ・ミラノヴィンチ「ニューヨーク市立大学教授(プロマーケット)」

 

格差のプリズムを通して見た、壮大な経済発展史だ。

息を吞む学業であり、(ほぼ全地球を渉猟した)包括的で絢欄たる洞察だ。

アルヴィンド・スブラマニアン「フォォーリン・アフェアーズ」

 

過去500年にわたる、目くるめく世界旅行に私たちを連れ出し、理念と政治の変遷がどのようにして、多種多様な格差レジームを形成してきたかを教えてくれる。

「資本とイデオロギー」に後押しされた私たちは、今源氏の可能性を新たに思い描くのだ。

「スヴェン・ベッカートハーバード大学教授

 

「経済発展と人間進歩を可能にしたのは、平等性と教育を求める競争であって、

財産・安定性・格差を新生かすることではない。

 

表紙裏

「本書の主題は、格差レジームの歴史と進化だ。

格差は経済的なものでもなければ、技術的なものでもない。

イデオロギー的で政治的なものだ。

これはまちがいなく、本書で採用した歴史的アプローチから生じる、最も衝撃的な結論だ。

」(はじめに)

「本書で分析した経験に基づき、資本主義と私有財産を超克し、参加型社会主義と社会連邦主義に基づく公正な社会を確立することは可能だと、私は確信している。

それらが実に複雑だからこそ、あらゆる市民の過去の歴史と体験、さらに理性に基づいた広範で集合的な熱議だけが、問題解決に向けた進歩をもたらせる。

結局のところ、本書の目的はたった一つしかない。

市民が経済と歴史の知識を再び我が物にできるようにすることだ」(結論)

 

私的に考えるいくつかのポイント(引用)

  • 著者の警告(p50)せっかちな読者は、最終章と結論をいきなり読みたくなるかもしれない・それを止めるわけにもいかないが、飛ばし読みでもいいから第1部から第4部までに目を通さないかぎり、各種の要素がどこから出てきたのか理解するのは難しいですぞと、警告はしておこう。
  • (p810)社会連邦主義は、富の再分配と社会構成を促進する国際主義と民主主義的連邦主義に基づくものだ。
 
  • <21世紀の資本>をどう見ているか(p929)私が見つけた情報源や読んだ歴史研究だったと思う。(もともとわたしは、現在よりもっと自由主義的で、こんなに社会主義的ではなかった)特に「格差と再分配ー20世紀フランスの資本」(2001年)の執筆を通じ20世紀の格差縮小がどれほど暴力的だったかを思い知った。2008年危機をきっかけにグローバル資本主義の金融的脆弱さ、そして資本の蓄積の歴史をより詳しく見るようになり、それが「21世紀の資本」(2013年)の革新になった。本書は新しい情報源に基づいている。植民地史と選挙後のアンケート調査だ。これにより、私は格差レジームについて政治―イデオロギー的アプローチを展開することになった。」
 
  • (p930)社会科学者は実に幸運だ。本を読み、情報源を検討し、資料や調査記録から学べることに対して社会が支払いをしてくれるのだかから。(中略)社会科学研究者は不毛な専門的論争や地位をめぐる争いに、あまりに時間を無駄にすることも多い。(中略)それでも社会科学は公的議論と民主的対話において不可欠な役割を果たす。本書で私は、様々な社会科学の情報源や手法を使って、格差レジーム史の社会的、経済的、知的側面を分析できることを示そうとした。
 
  • (p930)今日の民主主義的混乱は、市民的、政治的領域において、経済学が他の社会科学から独り歩きしすぎたことも一因だと私は確信している。(中略)経済学が独り歩きした結果歴史学者、社会学者、政治学者、哲学者、は経済問題を、経済学者に丸投げすることがあまりに増えた。だが政治経済と経済史には、私が本書で行ったように、あらゆる社会学が関係している。あらゆる社会学者は、使える定量的、歴史的データを集め、必要なら他の手法や情報源に頼るべきだ。実に多くの社会学者が定量的統計的な情報源を無視するのは残念なことだ。そうした情報源と、それが社会的、歴史的、政治的に構築された条件の批判的検討が、その適切な利用に不可欠だからだ。こうした怠慢のせいで経済学が独り歩きしてしまうばかりか、貧窮化している。本書がその改善に役立つことを期待したい。
 
  • (p931)読者が私の個別の結論に同意するかは、あまり需要ではない。私の狙いは議論を始めることであって、決着をつけることではないからだ、本書が新しい問題について読者の興味を掻き立て、それまでになかった知識で、だき者を啓発できたら、私の狙いは完全に達成されたことになる、

 

爪を立てる。

立ち位置

ヨーロッパ連邦主義の背骨の一つになっている人だろうと感じる。

 

ましてこの本のように議論のための共通基盤を提供しようという目的の本は、どう評価するか難しい。

議論のための土俵を提供してくれるのであれば、大成功なのだろう。

日本人研究者がこうした共通基盤を提供してくれることを望む。

訳は、権威主義と民主主義の谷間から社会がどう見えるのかという空気感を感じながら、基盤を知ることができると思うから。

やはり、この本にはヨーロッパの自負心がある。

EUの思想的背骨を担う人たちの一人なんだろうなーと思いつつ、官僚の力の強さは中国官僚とどれくらい違うのか?

疑問にというか、だれか比較している人いませんか?

出来れば日本人で、世界に通用する基盤提供を!

その訳がは日本人の持つ湿度感が、どれくらい通用するのかを知りたいから。

 

歴史をベースにしている本の中には<落穂ひろい>を思わせるところがある。

ベイリー・ギフォードの言う

<投資家として成功するには専門家にならない。専門家の意見を活用する>という言葉を土台にすれば、この本はグランゼコールの教科書の隣に収まっている感じかな。

振り返ればまだ糧となる部分が多く残っているといっても、ときめく部分は少ない。

現在を疾走する人が好きなのは個人的価値観なので、仕方がない。

それをサポートしてくれる本が必要で、そのために本を買う。

ノートのように活用してしまうので他の人が活用することはほぼできない。

 

<バラモン左翼><商人右翼>というワードが流行するときが来れば再読する必要があるかもしれない。

 

 

 

異常気象です。庭のバラが正月に咲いている。

冬眠してもらわないと冬の施肥できないので、強引に葉を取り強制冬眠させることに挑戦。

 

去年spaceⅩファンドというのを見つけた。

条件が合わず応募を断念。

何でも手に入ると思ったら大間違いで、あるものの中でベストを尽くす。

イーロン・マスク氏にはテスラ株で一生分の書籍代をいただいております。

 

<大洋を群れずに回遊する>

 

信頼とは何かを考えながら、書籍を媒介にして、生涯学習が行動の糧とするような前向きな発言を心掛けています

 

 

 

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