翌日、病院をたずねたのは午前のはやい時間でした。夫は目を覚まし、小さくカットした果物を看護師さんに食べさせてもらっているところでした。ああ、よかった!目を覚ました!私は足から崩れ落ちるような思いでした。「よかったね!目を覚ましたんだね!」と声を掛けましたが夫は無言。キョトンとした顔でこちらを見ます。コールドスリープから目覚めた夫は今の状況をいまいち理解していないようでした。

また翌日、病院へ。夫とは会話ができるようになりました。すると手の痛みを訴えます。左手が動かないのです。手を開いたり閉じたりができません。「もう手、動かないの?」と心配そうに聞かれました。医師によると人工血管を取りつける際に、腕神経叢(わんしんけいそう)という場所に接触したので合併症がでたとのこと。合併症は避けられないと手術前の説明で聞いていたので、私はあまり驚きませんでした。「いずれ良くなって絶対に元に戻るから大丈夫」と夫に告げ励ましました。今は落ち込んでもらっては困ります。