オペは2日後に決まりました。私は義実家の家族へ連絡。当日は私一人です。怖くて足が震える思いでした。

オペ当日、朝8時半からということで8時に病院へ。夫の不安そうな顔を見るとかわいそうで涙が出てきそうでしたが、平気なふりをしました。「寝ている間に終わってしまうから大丈夫!」と。夫はストレッチャーに乗って小さくバイバイと手を振って手術室に消えてゆきました。

ぽつんと一人、残った私は手術室近くの待合コーナーへ。ここは手術を待つ家族や病院関係者の休憩などに使われる場所のようでした。自販機の隣にトイレ、ソファと低いテーブルが2個。私は朝8時半の誰もいないソファに腰を下ろしました。

つい先生の説明にあった手術の様子を想像してしまいます。夫は低温麻酔によりからだの温度を低下させて胸を開き肋骨を開き大動脈を取り出し代わりに人工血管を縫い付ける。怖くて怖くて仕方がありません。いったい彼が何をしたっていうんだ。なんでこんな恐ろしいことになったのだろう。

もしもここで夫がこと切れたら?ここには私しかいません。一人でショックを受け止められるだろうか。親兄弟は遠方だし子供はいません。私しかいないんだ。涙が出てきては止まり少しうつらうつらしてまた覚醒します。親や友達にLINEしたりメールしたりしました。「ひとりなの?心細いじゃないの!大丈夫!頑張って」友達からのラインの返信にまた涙ぐんでしまいます。

17時頃、先生がやってきて「手術は終わりました、成功です」「これから閉じて終わりです」と。閉じてとは開いた体をこれから閉じる、大事な所は終わったよ、という意味らしいです。何度も何度も御礼を言ってやっと私のからだにも血が通ったような気がしました。先生のお姿も朝とは違いヘトヘトという感じでした。大手術だったと察します。

それからまたまんじりと時が過ぎるのを待ちます。夕刻がすぎ日は落ちて窓の外はとっぷりと暗くなりました。声を掛けられICUへ案内されたのは19時頃です。朝方わかれた夫と11時間ぶりの対面です。気管チューブを咥え心電図のモニターの下に眠る夫の姿。まだ麻酔が効いている夫の顔色は青黒くピクリとも動かず、まるで死んでいるようでした。

看護師さんや助手の方が「よかったですね」「成功ですよ」と声をかけてくださいました。先生からは「麻酔が切れて目を覚まし脳がちゃんと機能するか確認するまでは安心できませんよ」と注意を受けました。喜んでいいのかまだなのか、死体のような夫の顔を見て複雑な気持ちで病院を後にしました。