俺の彼女は強い。

 

 

彼女はセンスにうるさい。ファッションに関しては俺から見たら奇抜なファッションでしかない。何につけてもセンスを問われる。

 

付き合って数か月たった頃、ホワイトデーが近づく。彼女へのプレゼントとしてピアスを買う。大学生の俺からしたらそこそこの値段。別に値段が高いから必ず良いものだ と思っているわけでもないが、少なくとも ニアリーイコールではあると思っている。

 

 

ホワイトデーには会えないことがわかり、その前々日くらいに会ってプレゼントを渡す。彼女は喜んだ。。。。ように見えていた。

 

 

次会うときにそのピアスをつけている。うむ、喜んでいる。。。ように見える。

 

 

それから数か月経つとそのピアスを見ることはほとんどなくなった。地味に悲しい。

後日聞いた話によると、そこまで好みのセンスではないらしい。プレゼントしてから1か月くらいは、無理してそのピアスをつけていたと考えると悲しい。それにしても、好みのセンスがないだとか、数か月たったとはいえ本人に言うかよ。時効とかないだろそんなものに。

 

 

1年の中にはたくさんの記念日がある。ホワイトデー。誕生日。クリスマス。1年記念日等々。

その度にプレゼントで悩むことになる。

 

 

ネットでどういうものが喜ばれるのかを調べる。時計、財布、ネックレス、キーケース、ピアス、指輪と並ぶ中で最後に書かれていたのは、 結局彼氏からもらうものはなんでもうれしい という結論だった。なんでもというのは言いすぎであろうが、常識の範囲内のプレゼントであれば喜ばれるというものだった。「一般的には」。

 

俺の彼女は違う。彼氏からもらうものでも家族からもらうものでも友達からもらうものでも一緒らしい。いわゆる「彼氏補正」がかからない。プレゼントの中身がすべて。自分がほしいものだとうれしい。ほしくないものをもらってもうれしくない。そいういう奴だった。

 

俺の彼女は強い。

 

 

これまで2年数か月の付き合いで様々なプレゼントを渡してきた。そろそろ一般的にあげるようなプレゼントはネタ切れになってきて次なにをあげればよいのやらと悩むくらいには彼女に渡すものは多かった。その中で何回か言われたことがある言葉

 

「好みのセンスじゃないやつがある」

 

 

俺自身も適当に選んでいるわけではない。女性しかいないような店に行って店員さんに相談しながら彼女に合いそうなものを選んでいる。だから、彼女は少なくとも 俺と店員さん二人のセンスを否定していることになる。よくそこまで自分のセンスに自信が持てるものだ。

 

俺が彼女からもらっているプレゼントは100%センスがいい、俺の好みだという自負があるのだろうか。強い。

 

実際、センスがどうかは置いといて、俺の好みではない柄のプレゼントもある。でもそれは、彼女が選んでくれたものであるからもらって嬉しいし、大事にしているつもりだ。

 

そんな俺の本音もつゆ知らず、彼女は堂々と俺のセンスにケチをつけてくる。なんだあいつは。俺のほうもガツンと言い返してやろうかと何度も試みたが、俺の口が開くことはなかった。なんせ俺の彼女は強い。怖い。強い。それだけだ。

 

俺の彼女は強い。

 

 

俺が彼女と付き合ったのは1月で、2月3月は大学は春休みであった。

彼女とは大学は同じだが、キャンパスが違う。お互い下宿しているのだが、10kmほど離れている。電車、バスなどの交通手段も便が悪く、会うときは片道50分ほどの道のりを自転車をこいでいた。

 

 

大学の都合で、彼女の学部はそっちのキャンパスだけでなく、俺が通っているキャンパスに来なければならないことがよくあった。そのたびに彼女は言う。

「迎えに来て。」

俺の彼女は強い。

 

 

彼女の迎えに行くというのは男の憧れでもある。彼女と付き合ったらやってみたいことというのは誰しも持っているものだと思う。

彼女を迎えに行く。家で一緒に料理する。買い物に行く。 今ではどれも腹立たしい思い出ばかりだ。

彼女を迎えに行くというのはやっぱり車がよかったが…。

 

 

「しゃーなしな。」

少し嫌そうな感じで承諾する。ツンデレを装ってみる。効果はなかった。

 

片路50分もあるためつく時間がはっきりしない。だから、途中で今どの辺にいるかと言うのを逐次報告しながら迎えに行く。

 

「今 ハンバーガー屋」

「あぁ、マクドナルドのことね」

 

「今、パチンコ屋」

「あぁ、あそこのマルハンのことね。てかなんで店の名前言わないの」

 

「今、吉野家」

 

自転車に乗りながら考えられる低レベルなボケだった。

○○屋というくくりだが、吉野家だけ店名。もちろん無視された。

 

「あと5分くらいでつくよ」

無視されたことなど気にせず、優しく報告する。

 

家の前につく。彼女はまだ家の中にいるらしい。

5分後、彼女が出てきた。普通家の前に出て待っているのが礼儀じゃないのか。彼女の頭に礼儀なんて言葉はない。

 

「それじゃぁ行こうか」

俺は気にしていないように装って対応する。俺は優しい。

 

 

復路(俺にとっては往路)で、二人で他愛もない話をしながら自転車をこぐ。

 

 

とりあえず俺の家に荷物を置いて学校に行く。

 

 

そして学校での行事が終わった。21時頃。

そして彼女の悪魔の口が開く。

 

「送って。」

 

 

俺の彼女は強い。彼女曰く

「夜道を女の子一人で帰ると危ないでしょ。」

 

 

それは男が言うセリフだ。強い。

めんどくせぇ。そう思いながらも

「しゃーなしな。」

と送る。俺は優しい。

 

 

カップルで送ったりするのはよくあることだと思う。ただ、自転車という移動手段と、片路50分という距離、そして彼女の態度。。。

 

これが付き合って2年数か月の今も続いている。

 

俺の彼女は強い。

 

 

俺の彼女は強い。

 

 

ヤンキーに絡まれても一掃する。。とかそういう強さではない。

 

何事にも負けぬ強い心をもっている というわけでもない。

 

 

 

簡単に言えば、俺にあたりが強い。

容赦がない。

 

 

現在大学4回生の俺らは、付き合って2年数か月。

俺らが出会ってから付き合うまでは、彼女は可愛い、気遣いができる、いい女の子だった。

自分をしっかり持ち、将来のこともよく考えられる。

そんな彼女と、お互いを思いやり 幸せに過ごしていく。はずだった。

 

 

 

 

 

付き合って3週間ほどだった頃。ちょうど大学の期末テストの時期だった。付き合い始めとはいえ、そんな時期に無理してコンタクトをとる必要もないと思い、あまり連絡もせずにテストに集中することにしていた。彼女も同意していた。

 

テスト勉強をしている深夜1時ごろ。急に彼女から電話が来る。

「何を考えてるん?」

彼女の第一声だった。

「明日の物理のテストの解法を考えていた。」なんて言えるはずもない。

高校の時に問題に答えるときは 設問の意図をくみ取れという風に習ったが、

「何を考えるん?」という質問の意図がくみ取れない。何の前触れもなくこの質問はきつい。強い彼女だ。

 

「どういう意味?」と聞く。やみくもに問題に取り掛かるのではなく、設問の意図を慎重に探るスタンスだ。

 

「いやだから、何を考えているか聞いてるだけ」

 

この彼女、強い。

「今は明日の物理のテストのことを考えている。あなたとのことで何を考えているかというと、テスト期間やから無理に会う必要もないかなと思って連絡も取っていない。」

正直に答えた。これだけ問題に意欲的に取り組んでいたら、採点側もこの意志をくみ取って部分点をくれるのではないかと期待したが、問題に対する姿勢は採点されるはずもなかった。

 

「もうすぐ付き合って1か月やんな。」

 

なるほど、そういうことか。付き合って1か月の記念日。あまり考えていなかった。

心配になってググってみると、記念日は大事にするものらしい。俺の今までの彼女でそこまで気にする人がいなかったと人のせいにするのも卑怯なので、自分の非を認め謝る。

 

「ごめん、あまり考えてなかった。」

 

結局1か月記念日のことは話し合い、二人で納得いくような方法で祝うことになった。

ここまで、ただ俺が記念日に何も祝おうとしない最低男だ、ということになる。だが、話は次の月の記念日だ。

 

 

1か月記念日で失敗した俺は、2か月目の記念日で巻き返そう。そう思い、自分なりに盛大に祝うことにした(内容は忘れた。笑)

 

 

2か月記念日イェィ。そんな感じのテンションも織り交ぜふたり楽しく過ごした。・・・・

つもりだったが、彼女のほうはそこまでテンションが上がっているように見えない。

 

どうしたものかと聞くとこういう旨のことを伝えてくる。

 

付き合って1か月、3か月、半年、1年 の記念日が大事なのであって、それ以外をしょっちゅう祝ってたらめんどくなるやろそのうち。

 

うむ、よく理解ができない。整数の話をすると1の次は2だ。エクセルで1を打った後にオートフィルをかけると、1が続くか、 1,2,3,と続いていくのが普通ではないか。

1が大事で2が不要。3,6,12は大事。 難しい。この彼女、強い。

 

 

冷静に考えれば、<要所で祝う>という考え方であろう。しかし、彼氏が楽しそうに祝っているのを、さめたような顔でいる女なんているのか。祝うというのはお互い楽しいことなはずだ。

気分がそれほど乗っていなくても、楽しそうにふるまうのが礼儀ではないのか。

 

今の俺ならそう思うが、付き合って3週間でガツンと言われた当時の俺は、彼女の意見がすべて正しいように思っていた。こうして彼女の俺に対するマインドコントロールの生活が始まった