車を買い替えようと思っていた。

ここ最近、ずっとそのことばかり考えていた。幼稚園のお迎えの時も、可笑しいくらいに目新しい車に目が止まり、ネットで検索していく。

私の住む町は、車がなくたって電車とバスでなんとか生活できる、独身なら。だけど子供が生まれるのを機に、私が運転する車を購入したのは9年前。その時は、何人子供が出来るか分からなかったし、免許取得から放置5年、正真正銘のペーパードライバーの私に運転できたのは、4人乗りのコンパクトカーだけだった。

なぜ車を買い替えることになったのか。

それは、ちょっとしたきっかけだった。

ママ友が新しい車を買い、下取りを良い値で買い取ってもらってラッキーだったと聞いた時、ふと私の車の下取り価格ってどれくらいかな?と気になって下取り業者に問い合わせてみたのだ。

<期待はせんぞ、期待したら後でショックを受けることもあるだろうし…>

と思いながら、湧き立つ緊張を静めるため、ホットコーヒーを一口含み、居間のソファーに座り直した。スマホに響く発信音にだけ耳の神経を集中させた。大事なことはいつもスピーカーではなく、音量を大き目にして耳に押し当てて聞いてしまう。

「コンパクトカー9年目12万キロ超えですか…」営業マンの回答を聞いて愕然とした。<下取り価格がつかない>らしい。「…えっ、そうですか。少しもですか?」念のため食い下がってみる。「うちでは厳しいですね…」欲を纏った圧女を感じたであろう営業マン。ごめんなさい。欲深に生きたら、ろくなことなんてないことぐらい分かっていたのに、ショックだった。あまり価格がつかない予想は予めネット検索で分かってはいたし、全くということはなかろうと、意を決してのことだったのだ。

はあ~、なんか振られたみたいな感覚だな…。

自分の車の下取り価格を聞いた瞬間に、車の価値が無くなってしまったかのように、ぽっかりと心に穴が空いた。そして少しの希望も打ち砕け、買い替えようかと重い腰を上げたところを腰めがけてガツーンと殴られたようだった。世の中、そんなに甘くはない…よな。無知を恥じた。

私にとって車とは、単なる移動手段だった。

長女の一か月検診のため、検診会場である保健所までドキドキしながら運転した。駐車しただけで、どっと疲れたのを今でも覚えている。それから、チャイルドシートに断固として座ることを拒否し、背中をこれでもかというくらい反らせながら大泣きし、意思の強さに感服したあの頃。目的地の道中、何度停車してあやしたことだろう。そして、好きな番組が出来ると大人しく座るようになり、メディアの力に支えられ目的地まで難なく行けた時には成長を感じた。そして今や泥んこの靴を投げ入れ、足を投げ出し、気づけば口を開けて寝息を立てれるほどリラックスできる我が家の一室のようになっている。

いつしか私にとって車は、育児を支える同士のようなものになっていた。

つづく