庭の梅が蕾をつける頃






私の家に会話というものゎ存在しなかった。






誰一人として笑う者ゎいなく
もはや家族でゎなく他人の集まりのよう。






結局、両親ゎ私や弟がまだ幼いということから離婚しなかった。








こんな生活だが私ゎ案外気に入っていた。





日が沈むと共にけたたましく家の中に響く

食器の割れる音



父の怒鳴り声



母の悲鳴



弟のすすり泣く音




そんな音ばかり耳に入るよりは、会話がなくテレビと時計の音しかしない生活の方がましである。







しかし







そんな日々も長くゎ続かなかった。









日曜日







母が大きな鞄を持って







泣き叫びながら玄関を後にした。








庭で母の車のエンジン音が鳴る。









私ゎ靴をはくのも忘れ






素足のまま






車の前に飛び出した。






私にゎその後の記憶がない。









庭の梅が白く小さな花を無数に咲かせいた。