昔の日本人にとって生活保護を受給するのは「恥」でした。自分で働かないで、他人が払った税金で養ってもらうことを「恥ずかしい」と感じていました。
 だから多少無理しても働こうとしたし、どんなに生活が苦しくても生活保護だけは何とか避けたいと考えていました。

 でも現実として色々な事情で働けない人も居ます。そういう人たちの生活を保護するのが、文字通り生活保護ですから、少しでも恥ずかしくないように配慮してきました。だから、周囲の人に「あの人は生活保護を受給してる」と分かりにくいように「現金支給」して来たのです。
 しかし本来、最低限の生活を保護するためなら「現物支給」で十分です。国が住む場所と着る服と食べる物を用意して支給すればいいのです。そういう方法でも最低限の生活を保護できます。

 では何故それをしないかというと。「現物支給」だと、例えば「あそこに住んでる人は生活保護の受給者だ。」と簡単に分かってしまいます。また服を支給するとしたら、みんな似たような服になりますから、まるで囚人服です。ますます「あの人は生活保護の受給者だ。」と分かりやすくなってしまいます。これは「生活保護は恥だ。」と考えている人にとっては大変な苦痛です。そんな事情で「現物支給」は避けられて来たのだと思います。

 ところが最近は「生活保護は恥ずかしくない。」という風潮があるようなので、もう現物支給でいいのではないでしょうか。働けない人を一カ所に集めて住まわせて、みんな同じ服を着せて、食べる物を与えればいいのです。
 食べ物は廃棄するコンビニ弁当を政府が安く買い上げて支給するか、もし毎日焚き出しをするなら、焚き出し要員に最低賃金の1000円を支払ってあげれば、雇用対策にもなると思います。

 さて、住む場所を用意する、季節ごとに着る服を買い与える、毎日食べる物を支給する、とした場合、それにかかる費用はいくら位になるでしょう。
 それを維持するのにかかる費用を受給者の人数で割れば、一人当たりいくらかかっているか分かりますが、それは現在の現金支給と比べてどうでしょう。安上がりになるのではないでしょうか。

 おそらくは安くなるだろうと思いますが、仮に高くなったとしてもメリットはあります。物で支給することで、支給された物がお金に換算したらいくらになるのかが、パッと見では分からなくなるということです。つまり「最低賃金との比較ができなくなる。」ということです。

 今は生活保護を現金で支給しているから、最低賃金で働いている人たちの給料と簡単に比較ができてしまいます。必死で働いて稼いだお金より何もしないで貰えるお金が多かったら、誰だって働く意欲を失くします。これは大きな問題です。

 この問題を解決する方法は「最低賃金を上げること」も一つの方法ですが、「比較できなくする」のも、良い方法だと思います。



-<以下引用>---

最低賃金「逆転」6都道府県で続く

今年度の最低賃金について、各都道府県で引き上げ幅を決める審議会が行われていますが、最低賃金で働いた場合の1か月の収入が生活保護の水準を下回る、いわゆる「逆転現象」が、北海道や東京など6つの都道府県で続くことが明らかになりました。

最低賃金は、企業が従業員に支払わなければならない最低限の賃金で、都道府県ごとに決められ、厚生労働省の審議会は、先月、今年度の最低賃金を全国平均で時給744円とする目安をまとめました。
これを基に、各都道府県の審議会で引き上げ幅を決める労使の話し合いが行われていますが、最低賃金で1日8時間、週5日働いた場合の1か月の収入が生活保護の水準を下回る、いわゆる「逆転現象」が6つの都道府県で続くことが明らかになりました。
逆転現象が続くのは、北海道、宮城県、東京都、神奈川県、大阪府、広島県です。
現在は11都道府県で逆転現象が起きていて、このうち5つの府県では今回の改定で解消されましたが、6つの都道府県については、使用者側の反対などから、逆転現象を解消するまで最低賃金を引き上げることができませんでした。
厚生労働省の審議会は原則2年以内に逆転現象を解消すべきだとしていて、6つの都道府県は来年度での解消を目指すことになります。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120825/k10014529341000.html