カービィのアニメはやばい、そんな噂を聞いたことがあるのてはないでしょうか。


私が視聴したのは子どものときなのでそこまで覚えていませんが、今振り返ると中々にクレイジーだったなと。アニカビ名言集で調べると、デデデ大王の「環境破壊は気持ちいいぞい」や、コックカワサキの「死んだんじゃないの~」など、確かにアウトなコレクションとなっております。


現在、Amazonプライムやdアニメストア、U-NEXTなど名だたる配信サイトのどこを覗いても配信されておらず、最近までYouTubeやニコニコの違法アップロード、または海外の違法サイトくらいしか見る方法はありませんでした。


2023年3月、ファンからの根強い人気を反映してか、様々な特典つきのHDリマスター版が、全100話分セットで販売されました。ただし、定価ですら5万円程度、通販サイトでは10万円近いのもある高額商品となっています。

また、発売にあたって公式から以下の注意喚起が行われたことも有名です。


「本作品には2001~2003年放映のアニメ映像を収録しております。本編の映像・構成・台詞に、現代の社会通念や今日の人権意識に照らして不適切と思われる表現が一部ございますが、制作当時の時代背景と作品のオリジナリティを尊重して、原版のまま収録しておりますことを予めご了承ください。」


そのまま販売できて本当によかった()。


前置きはここまでです。

余程のファンでない限り、そんな大金を支払ってまで手に入れるのは気が引けると思います。一応子ども向けに放送された作品ですし…どこが子ども向けだよ


なので、私が代わりにアニカビの魅力を伝えることができたらいいなと思うのですが、いわゆる社会風刺にあたる表現は、他のサイトでも触れている方が多いです。


そのため、この記事に独自性を出すため、社会風刺はもちろん、他にも大量にあるツッコミどころを拾いつつ、視聴できない人のために一部の話はほんの少しネタバレありで語っていこうと思います。

それでは、アニカビ劇場のはじまりはじまり。


圧倒的な社会風刺の数

放送されたのは2001~3年ですが、今にも通じるような社会風刺が大量にあります。

まずはデデデ大王の台詞でお馴染み環境破壊。例の台詞は、ゴルフ場を作るために森林を伐採しているシーンで飛び出しました。

環境破壊は気持ちいいZOY☆

他にも、便利さを追及して工場を稼働させるあまり大気汚染や酸性雨に繋がる回、氷が融けて住む場所を失ったペンギン達が村に襲来するという温暖化、移民、侵略問題全部乗せの回、アニメーター業界のブラックさを描いた回、肥満問題を描いた回、ゴミを捨てる場所に困る回、マスコミのいい加減な報道やテレビを鵜呑みにする愚民を描いた回、観光客のマナー違反を描いた回、ペットを捨てて問題になる回、いじめや教師の権利、育児放棄など教育上の問題を描いた回etc…挙げるとキリがありません。


社会風刺だけじゃなくても、大人しかわからないようなパロディネタも多く存在しています。

アニメオリジナルキャラが多く、ゲームとは違ったよさがあるとはいえ、この脚本をOKしちゃう初代カービィ生みの親は、たいそうユニークなゲーム開発者である。

やはり桜井さんは偉大

まるまる社会風刺を描いた回もありますか、普通に子ども向けの内容の中、たまにえげつない発言をぶっ込んでくることもあります。変な発言はこちらのwikiにまとめられています。 なんかコメントが荒らしみたいなのもありますが気にしないでください。

私は特に、デデデ大王の「歴史はスタジオで作られる」や「国家ぐるみの場合は犯罪にならんぞい」が好きですね。

ブラックな面だけでなく、「ダメで元々人生はギャンブル」みたいな良い台詞もありますね。

台詞単位じゃなくても、子ども向けアニメにテポドン、原子力潜水艦、作画監督、製作進行、非核三原則、ゆとり教育、神権政治、独裁国、内部告発、行政革命、テロリスト,and so on …といった単語は普通出てきませんよ…

アニメカービィが和製サウスパークと呼ばれる所以ですね。


この風刺の多さとブラックさはアニカビ名物として有名ですが、アニカビにはまだまだ底知れぬ魅力が詰まっています。


個性豊かな登場人物たち

こちらもブラックさとセットで語られる印象がありますが、本当にヒロアカもびっくりの個性の塊です。


まずはモブたち。つまるところカービィ達が暮らすプププビレッジという村の住人たちです。流石にモブ一人一人に細かい設定はないものの、ブラックネタの犠牲に、倫理観の欠如したやばい集団となっております。

具体的には、生き物を轢き56して罪の意識すらない村長、見つからない方が仕事が減って楽と言って行方不明者を放置する警察官など。

アニメ42話あたりで、隕石で世界が滅ぶかもしれなくなったとき、それぞれの罪を懺悔し合うのですが、万引きやらお釣りの誤魔化しやら、間違えて健康な歯を抜いたやぶ医者やら、子ども向けアニメなのに汚い大人しかいませんね。


そんな村人たちの中でも異彩を放つのはこの人。

この腐ったパンみたいなマヌケ面をしているキャラは「コックカワサキ」です。
他の村人が、ブラックな社会風刺のために愚かな人民として描かれるのは仕方ない感がありますが、こいつは社会風刺とか関係ないシーンでもシンプルにサイコパスです。

有名な台詞は、デデデを見かけなくなったときの「死んだんじゃないの~?」ですが、「占いより俺の食中毒のほうがよく当たるよ~」や「(太ってる人に対して)あのお肉、分けてくれないかなぁ~」などもインパクトが強いです。
危ない発言をした後、今のはギャグだと誤魔化すときもありますが、余計に臭いです。

このアニメの影響か、原作ではただの一敵キャラなのに非常に人気で、星のカービィスターアライズにて久しぶりに再登場したときは凄い優遇っぷりでした。

ちなみに声優の飛田展男さんはこのアニメだけで、コックカワサキ含めてキャラを10体以上のキャラを演じています。


続いて紹介するのは大臣の娘「フーム」。一応本作のヒロインですが、まあこのキャラデザで可愛くなるはずも無く、サジェストにはうざいと表示される始末…
しかしこのキャラ、侮れません。頭身があれなのでわ諸説ありますが、精々10歳前後くらいのはずなのに、異様なまでに頭が良いです。
まず、水質汚染を化学反応で調べることができます。他にも社会風刺のせいで、相対的に頭が良いシーンが散見されます。硫黄・窒素酸化物知ってて酸性雨知らないのはどういう学習手順なんだ…

一番畏れ多いのは、衛星や宇宙ステーションはおろか、天気予報もままならず、コンピューターすらない文明レベルなのに、望遠鏡だけで隕石が地球に衝突する日数を計算で導き出したこと。しかもこれをもとに大砲で隕石の軌道を変える計画が成功させているので、かなり正確な計算です。流石神権政治なんて言葉を知っているだけあります。ガチガチの理系に見せかけて文系の知識もあるの終わってる…

こいつは「ブン」。大臣の息子で、フームの弟にあたります。よくいる目隠しキャラで、結局最終話まで目の存在は確認できませんでした。基本はガキですが、社会風刺ネタの影響もあり、その辺の大人よりは遥かに頭が良いです。てかこの兄弟親より頭良い。作中のデデデの台詞を借りるなら、「流石親子!DNAは不気味」といったところ。
ポケット代わりにパンツの裏に物を仕込むことがあります。しかも前側。絶対汚い



次に紹介するのは、大人気「カービィ」。流石に画像は割愛していいでしょう。このキャラ、本来より200年早くこの星に来てしまった赤ん坊という設定なので、言語能力が欠如しています。そのため、ブラック発言などが一切なく、精々ポケモンの鳴き声みたいな「ぽよ」と「スイカ」みたいな食べ物の名前くらいしか喋りません。このアニメほぼ唯一の癒し枠。かわいい。
最初こそ空気の読めないピンクの悪魔っぷりを見せつけますが、フームたちがしっかりしつけしてからは、吸い込みではなくナイフとフォークを使って食べることもできます。

こいつの魅力はかわいさだけじゃない。たまに製作陣が本来の子ども向けアニメという設定を思い出したシーンでは、熱い戦いを繰り広げてくれます。コピー能力を用いて戦うっていうのがシンプルに映えます。これに対するブンのメタ発言「どうせ吸い込んで終わりだよ」は、熱さをわかっていない

特に96話あたりからの敵からの襲撃、その反撃に毎回撃墜されることに定評がある戦艦ハルバードに乗って敵地に殴り込みにいく展開は、今までがなんだったんだというくらい、純粋な子どもの心を取り戻させてくれます。
また、カービィシリーズはBGMの評価の高さで有名であり、原作で聞いた熱い曲が流れたり、ハルバードの内部でキングロブスターと戦ったり、しっかりファン向けな要素も詰め込まれています。



次に紹介するキャラは「メタナイト卿」。これも有名なので画像は割愛。今のようなクールキャラは、このアニメで形作られたといっても過言ではありません。

ただこのアニメでのメタナイトは、剣なのに敵を切らずに弾き飛ばしまくるなまくらっぷりを披露したり、無許可でフィギュア化されても自分のレア物扱いに喜んだり、拷問シーンでもっと痛めつけなくてはと歓喜したり、自分で自分のことを賢いと褒めたり、普段クール故のギャップを用いたギャグシーンに使われがちです。社会風刺とは違ったひとつの魅力ですね。

また、登場する際大体高いところから見守ってるような構図で現れるので、低所恐怖症というあだ名がつけられています。
ただこんな強キャラ感出しておいて、カービィに比べると余裕で雑魚です。

この軟体動物は、アニメオリジナルキャラの「エスカルゴン」です。正式には「ドクター・エスカルゴン」ですが、本編でドクターらしいことは特にしてません。人気が出てゲームに逆輸入されたりもしています。
こいつはデデデ大王に仕えている毒舌キャラです。
基本的にこのアニメのデデデは悪役なので、カービィ達に様々なイタズラをするのですが、その矛先はカービィだけでなく、このエスカルゴンにもよく向けられます。そしてハンマーで殴られます。
そうした恨みからか、こいつの台詞は、悪魔!サディスト!人でなし!のような、これまた子ども向けとは思えない罵倒のラインナップとなっています。

しかし、このキャラの真髄はワードチョイスではありません。まず、エスカルゴンは語尾に「~ゲス」とつけます。これに深い意味はありませんが、毒舌が発動していると、たまにこの語尾が無くなり、素の心情が漏れてるみたいで笑えます。
ちなみにこれはほとんど声優の龍田直樹さんのアドリブです。作中に「得意のアドリブで誤魔化すゲス」とか言ってるメタいシーンもあるし。龍田さんは誰もが知ってる有名キャラの役こそ少ないものの、サブキャラを中心に勤めてきたベテランです。


そしてこのエスカルゴンの相棒が、このアニメ最大の問題児である、我らが「デデデ大王」。ゲームでも有名なキャラなので画像は割愛します。
アニカビの名言を集めれば、こいつのブラックな風刺や、パロディ、しょうもないネタ発言で半分以上埋まります。
そして先ほどのエスカルゴンとのアドリブの掛け合いも必見。声優はコナンの阿笠博士などで有名な緒方賢一さん。これまたベテランです。

最後に紹介するのは「カスタマーサービス」。ここからデデデが魔獣を購入し、それをカービィに仕向け、結局最後にはカービィがそれを倒す、というのがお決まりの流れです。
そしてこの魔獣ダウンロード、当然お金がかかるわけで、作中では合計金額が兆を通り越して京に到達していたり…


これら登場人物から繰り出される掛け合いは、子ども向けの範疇を凌駕しています。

それでもやはり、アニカビの勢いは止まらない

ブラックや風刺を除いたネタも豊富
これはギリ子どもでもわかるかもしれません。しょうもないネタ、コメディ要素、話自体の面白さも満載なのがこのアニメ。

ゴルフのバンカーと馬鹿をかけた「そんなバンカーな」といったダジャレ、「おっ○い」と言いながらゲロ不味いパイを投げる魔獣、メタナイトだけでなくその手下までキャラ崩壊、シンプルに口が悪い等、1シーンだけ切り取っても楽しめると思います。

そして脚本も凝っており、魔獣を倒すという最終コンセプトは変わらないものの、普段すぐにキレるデデデが殴られても何も言わない温厚な別人になってしまったり、ワドルディ達がボイコットして大移動したりetc…このストーリーのバリエーションはむしろ子ども向けかもしれないですね。

ちなみにおまけ程度に、ジャンプ漫画のような熱い要素もあります。ナックルジョーがカービィを倒しに来たと思えば、それは鍛えるためで、途中で裏切ってカービィと共闘する回を筆頭に、20周年コレクションにも封入された、実力者しか使えない宝剣ギャラクシアを巡る回などがあります。
先頭シーンも、CGアニメーションの混ざった迫力満点の仕上がりになっています。


見るより観る方が早いのですが、観る手段の限られるこの作品。いつか配信されることを願いたいです。