第10話【それぞれの想い】


...事態は最悪の結末を迎えた。

病院に搬送され
すぐに治療を受けたのだが、
一度も意識を回復することなく
茜は息を引き取ったのだ。

神崎からの知らせを受け、
私は病院へ向かった。
自分の目で確かめるまでは、
信じられなかった。
受け入れられなかったからだ。


病院に到着し、
半ば脅すようなカタチで
看護師から茜の病室を聞き出した。

嘘であって欲しい...
茜に限ってそんなこと、
あるわけない...
そんなことを思いながら、
ただひたすら病室に向かって走った。

そして、
病室のドアを勢い良く開けた。


そこには ベッドの上で眠る茜と、
茜に抱きついて
泣いている両親がいた。

友香「あかねん!」

私は茜の名前を叫ぶのと同時に、
ベッドに近づいた。
しかし あと少しというところで、
茜の母親に止められてしまった。

    母「友香ちゃん、お願いだから帰って」

友香「おばさん...」

    母「学校で何があったのか、
            神崎先生に聞いたわ。
            今は、あなたの顔を見たくないの」

茜の父親に連れられて、
私は病室を出た。

父親は自動販売機でお茶を2本買い、
1本を私に差し出した。
私達は椅子に座って、
しばらく無言の時間を過ごした。

お茶を半分くらい飲み終わった頃...

    父「友香ちゃん、
            さっきはごめんな?
            母ちゃんが酷いこと言って」

友香「いえ、言われて当然だと思います。
            こうなってしまったのは、
            私のせいなんです」

    父「母ちゃんはな、
            怒りと悲しみをぶつけられる
            場所がなくて、苦しんでるんだよ」

友香「私にぶつけてくれれば...」

    父「小さい頃からの付き合いだ。
            私達はね、友香ちゃんを
            茜と同じように娘だと思ってる。
            何があったとしても、
            友香ちゃんを恨む事なんて
            出来ないんだよ」

友香「私には...そんな資格ないです。
            だって、あんな酷いことを...」

    父「友香ちゃんに出来る事は、
            起きてしまった事を
            次にどう活かすのかを、
            考える事じゃないかな?」

友香「ごめん...なさい」

    父「娘を失った事は悲しいが、
            友香ちゃんに怪我が無くて良かった」

友香「すみません...
            本当にすみません」

    父「友香ちゃん。
            茜の葬儀、来てくれないか?」

友香「でも...」

    父「茜が一番 見送られたいのは、
            友香ちゃんじゃないかな?
            待ってるからね。
            気をつけて帰りなさい」

目の前から立ち去っていく
おじさんの背中に向かって、
深々と頭を下げた。
そして私は反対の方向に歩き、
病院を出た...