アルツハイマー型認知症
と
正常圧水頭症が合併する場合もあり、
実際はより複雑です。
夕刊フジより。
認知症
と
間違えやすい!?
「正常圧水頭症(NPH)」とは
■朝田隆(あさだ・たかし)
1982年東京医科歯科大学卒業。メモリークリニックお茶の水理事長、東京医科歯科大学医学部特任教授、医学博士。数々の認知症実態調査に関わり、軽度認知障害(MCI)のうちに予防を始めることを強く推奨、デイケアプログラムの実施など第一線で活躍中。『効く!「脳トレ」ブック』(三笠書房)など編著書多数。
■前原健寿(まえはら・たけとし)
1985年東京医科歯科大学卒。同大講師、准教授を経て2012年11月より現職。専門・研究分野はてんかん外科、脳腫瘍の外科、脳血管障害の外科。脳卒中発症後24時間以内の急性期患者を24時間365日体制で受け入れる付属病院「脳卒中センター」では脳神経機能外科診療科長としてチーム医療を先導する。
人間の脳は頭蓋骨の中で髄液に浮いている。
ところが、
何らかの原因で脳と髄液のバランスが崩れると
髄液が必要以上にたまって広がってしまう。
すると髄液が脳を圧迫、
認知症とよく似た症状を引き起こす。
これが高齢者にみられる
「正常圧水頭症
(NPH=Normal
Pressure
Hydrocephalus)」だ。
朝田 NPHも認知症と間違えられやすい病気ですね。私のクリニックにも「高齢の親がここ1年ほど様子がおかしい」ということで来院された方がNPHだった、ということがありました。簡単な見分け方を教えてください。
前原 (1)物忘れ(2)歩行障害(3)尿失禁、これがNPHの3大兆候です。初期段階からこの3つがそろってみられるようならNPHを疑ったほうがいいでしょう。
朝田 検査と治療はどのようなものですか。
前原 CTやMRIによる画像診断で脳室が大きくなっているかどうかを調べ、NPHと診断された場合には脳室にたまった髄液を「シャント術」によって腹腔に流します。事前に少量の髄液を抜く検査(髄液タップテスト)をすると、よちよち歩きだった人がスタスタと歩けるようになったり、質問にちゃんと答えられるようになったりします。
朝田 個人差はありますが症状が目に見えて改善するので「治る認知症」と言われています。体内に設置するシャントシステムの技術も日進月歩だそうですね。
前原 手術入院は1週間から10日、その後は通院でフォローすることになります。「加圧変式バルブシャントシステム」は設置後も体の外から調整できます。マグネット式になっていて外来ですぐに終わります。もちろん痛みもありません。
朝田 シャントを作って終わりというわけではないのですね。NPHは認知症患者の5~10%に潜在的に認められるといわれています。思い当たる方はぜひ脳神経外科・神経内科などの専門医に相談していただきたいと思います。