生き方を整える
1.人生を変えるのは、大きな成功や劇的な出来事だけではありません。むしろ、朝、布団を整えること。「いただきます」と手を合わせること。使ったものを元に戻すこと。そんな日々の小さな整えの積み重ねが、気づけば、その人自身の生き方になっていきます。昔の日本人が大切にしてきた「整える」という感覚から、生き方の本質について考えてみました。生き方は、特別な場面で決まるものではありません。大きな決断をしたとき。立派なことを成し遂げたとき。誰かに評価されたとき。そういう瞬間に、人の価値が決まるように思われがちです。けれど、本当は違うのだ。
2.生き方は、もっと日常の、もっと小さなところに現れる。朝、起きたときに布団を整える。食事のときに両手を合わせて「いただきます」。食べ終わったら両手を合わせて「ごちそうさまでした」。使ったものを元に戻す。人に向ける言葉を荒らさない。疲れていても、できる範囲で場を整える。そうした「日々の整え」の積み重ねの中に、その人の生き方が自然に現れていきます。逆に言えば、どれだけ立派な理想を語っても、日々が荒れていれば、人生全体も少しずつ荒れていく。
3.心というものは不思議なもので、周囲の乱れと無関係ではいられません。机の上が乱れる。言葉が乱れる。時間の使い方が乱れる。すると、心も少しずつ乱れていく。そして心が乱れると、今度は物事の受け止め方まで荒くなっていきます。だから昔の日本人は、まず「整えること」を大事にした。武士は、戦う前に庭を掃きました。職人は、道具を整えました。茶人は、場を整えました。神道では、祓い清めを大切にしました。一日の終りに、机の上のものを全部片付ける。朝、仕事を始める前に、机の上を一度綺麗に拭く。脱いだスリッパを手で揃える。玄関の土間に履物を置かない。
4.昔の日本人は、それらは単なる形式で行っていたのではありません。整えることで、自分自身を整えていたのです。そして、ここがとても大事なのですが、整えるというのは、「完璧にすること」ではありません。疲れている日もある。余裕のない日もある。うまくできない日もある。それでも、「少し整えよう」「少し良くしよう」という方向を向く。その姿勢そのものが、心を整え、整った心が、その人の生き方になっていっていたのだと思います。人生で、一発逆転を狙う人もいます。多くの場合、失敗します。むしろ、毎日の小さな整えが、気づけば未来を整えるのです。だからこそ、今日という一日を、ほんの少し整えて終える。それだけで、人生はちゃんと変わり始めるのだと思います。今日も良い一日をと繰り返そう。