これは私が東北の親戚の家に疎開していた頃の話だ!

当時は終戦直後でもあり、食べ物、着る物のには非常に困ったものだった!


当時の食卓に並ぶものは大根、芋類が主食だった!
食卓にそれだけ並ぶならかなり恵まれている方だ!

しかし、私と共に居候していた、大富豪の安川は毎晩ならぶ芋類に嫌気がさし「何で毎日芋なの?何で魚はないの?肉は?いったいどうなってんの?」と毎日のように我儘をいい荒井氏を困らせた!


私は秘められた使命に突き動かされていた為、毎日「やかまっしぃパンチ!むかっ何故?どうして?そんな言葉にはウンザリだ!!人間はいつからそんなコトばかり言うようになった!?」といつも熱い鉄拳を振りかざし、喰らわしたものだった!


そんな毎日が続いたある日、安川も己のおかれている立場に気づき身を任せ、助け合いの精神を学び、武士(もののふ)になったようだ!


「ゲルさんこれが全てを受け入れるってコトなんだね!」


すっかり現状(いま)を受け入れた漢(おとこ)に迷いはない!


「自然と共に生き…自然と共に死す!そこになんのためらいがあろうか…?」


こうしてまた1人と私の教えを守り、1人の男が漢(おとこ)に巣立ちする姿に喜びを感じる私がいた!
そのころ、私は終戦直後に世話になった荒井氏の実家に居候して、そこから徒歩で通学していた。


学生服に身を包み、下駄履きで高歌放吟するバンカラな青年ではあったが、私の美少年ぶりは三軒両隣にあまねく知れ渡っていた。


特徴ある高下駄の音が響きわたると「ゲルさんよ-、憧れのゲルさんよ-!」と黄色い声を盛んにあげて見つめる視線の痛いコトといったら、それはタマラなくコソばゆかった。


世が世なら銀幕のスターに祭り上げられること間違いなしだったのだが、いかんせん当時の私は、秘められた使命に突き動かされていたので、そういった甘い情に流されてもおらず、泣いてすがりついてくるオナゴを切っては捨て、切っては捨て、切っては捨て…


オナゴの涙を後目に、「ああ、これが俺の宿命!」背中で語る姿と、ふかすタバコの煙があいまみえてまた一段と漢(おとこ)の哀愁がただようであろう私がいた!