ある土曜日、子どもが友達の家へ泊りに行くことになり…
思い立って、ボザールへ映画を観にぶらりと行ってみることにしました。
20時15分から、イングマール・ベルイマンのLe visage、「顔」。
ベルイマンの作品は以前好きでDVDもたくさん観たけれど、これは知らないな~。
ボザールというのはThe Centre for Fine Arts 芸術センターというようなものですが、ボザールという愛称で皆に親しまれている場所です。
ブラッセル交響楽団の本拠地でもあり、コンサートや展覧会、ダンス、映画、演劇、文芸、建築に関するものなど、いろいろな催しが行われています。
あのアールヌーボー建築のオルタによって1928年に建てられました。
さて、時間ぎりぎりに飛び込んだのですが、お目当ての映画は…
コンサートホールのある建物とは違う別棟でひっそりと上映会があっていました。
入場料は2€。
入り口でチケットの半券を渡し、扉を開けてもらうと、そう小さくもない場内はすでに満席でした。
空いた席を見つけて座って周りを見渡すと、仕事帰りの人や、おじいちゃんおばあちゃん、たくさんの映画好きの地元の人たちでぎっしり…外国人は、私ひとりかも?
そして、気がついたこと…なんと映画はスウェーデン語、字幕はフランス語のみ!
あ、それで外国人がいないのか~、フランス語少しは読めるけど、大丈夫かな…?
☆゚・:,。*
ところが…映画がはじまると、なんの問題もありませんでした。
1958年のベルイマンの白黒の映像は、映画館で見るとすごい迫力で、鳥肌モノでした。
まわりくどい説明は一切なく、表情のわずかな動きを見せたりするような、役者のすばらしい演技力で物語る…
言葉はあまり重要ではありませんでした。
この方は、悲観的なものを描きながら人生を肯定している人だなと思います。
ストレートにガツンとやられてしまいました。
ベルイマン作品の良さがやっとわかったような気がしました。
やはり、字幕を読んでいるとそれに気を取られてしまうのかもしれませんね。
そして、大画面を前提としてつくられたものは、映画館の大画面で観るのにかぎります。
ベルイマンはすごい監督です!
☆゚・:,。*
帰りはすっかり暗く、車まで坂を登りながら星空を眺め、とってもいい気分。
週末のブラッセルの夜はなんて静かなんだろう。
それにしても、スウェーデンの巨匠とはいえ、古いモノクロ映画にあんなにたくさんの人たちが集まるなんて…
人間の内面を探る映画を観ていると、つらくなって目を覆いたくなることもあります。
そういう人間の愚かしさと向き合える人たちは、やはり人生の達人なのではないかしら。
ベルギーの映画通達と一緒の時間を共有できたことは、私にとって何よりの収穫でした。
ベルギー人やフランス人と日本人との大きな違いのひとつは、芸術との親密度です。
そういうものが根付いていった背景には、この皆に愛されるBozarのような場所があるんだなと思います。
少々古すぎるこの建物も市民の愛着の証だと考えれば、不思議と味があるように見えてきます。
そういえば、この間のアカデミー賞、モノクロ映画の”THE ARTIST”がさらっていきましたね。
フランス人監督の映画への思いを託した現代のモノクロサイレント、どんなふうに描かれているのでしょうね。
公開を楽しみにしています!