細胞 上下巻 シッダルタ・ムカジー 2 早川書房 | エルヴィス・プラス

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第一部 発見
この章は細胞が発見されていく過程を
描いています。
細胞に関する本は始めにイギリスの科学者
ロバート・フック(1635-1703)の話から
始まります。コルクの切片を顕微鏡でのぞき、
微小な四角い穴を「セル」と名づけた―
という記述です。
SF・ミステリ・科学エッセイストでもある
アイザック・アシモフも「空想自然科学入門」
でこの記述から生物学の歴史を説明しています。

著者はこの「セル」の発見から人間くさい
ドラマをはさみ説明していきます。
同時代の織物商人レーウェンフック
(1632-1723)素人ながら独学で顕微鏡を
作成。この秘密主義の織物商人とフック、
さらにニュートンとの関わりも興味深い
エピソードです。
物理、数学、天体学者として知られる
ロバート・フックの肖像画が
現存していない点にも触れています。
そのため、ウィキペディには2004年に

描かれた油絵が載っています。

 

「発明」の章は細胞とは何かを追求した
人々の物語ですが病理学者
ルドルフ・ウィルヒョウ(1821-1902)
に注目しています。
著者が関わった患者、重症複合免疫不全症
(SCID)その原因を突き止める指針に
なったのがウィルヒョウの残した講義集
でした。その中の文章を読み解き、漁師
の網をたとえに網全体に混乱が生じた細胞
のネットワーク、網の端ではなく中心に
問題があることを突き止めます。
又、180年前の常識の壁に破れ、
悲惨な生涯をおくった細菌の探求者
も描かれています。
新しすぎる発見は受け入れられないの
でしょう。このことは1970年代にも
起こっています。
古細菌(アーキア)の研究もなかなか
認められなかったのも事実です。

こうして現代までの道筋を語り
次の章では細胞の構造に
入っていきます。

病気の原因となる細菌発見物語には
古典的な名著「微生物の狩人」上下巻
ポール・ド・クライフ 岩波文庫
があります。お勧めの本です。