古い体育館の床がギシギシと音を立てるのは、何十年も使い続けられた証。大きな窓から差し込む光が、木の床を温かく照らしている。この体育館には一つの秘密があった。それは、夜になるとひとりでに動き出す古い扇風機だった。
その扇風機は、体育館の片隅にひっそりと置かれていた。見た目はどこにでもある普通の扇風機だが、夜になると魔法がかかり、体育館内を縦横無尽に走り回るのだ。なぜこの扇風機が動き出すのか、それは誰にも分からない。ただ、風の精霊が宿っているという噂だけが広まっていた。
ある夏の夜、体育館の窓から涼しい風が吹き込んだ。その風が扇風機に触れると、扇風機は目覚めたかのようにゆっくりと回転を始めた。最初は静かに、そのうちに勢いを増し、やがて体育館の隅々まで風を送り始めた。
「今日はどこに行こうか？」と扇風機は考えた。体育館の中にはバスケットボールのゴールやバレーボールのネット、ランニングトラックがあった。扇風機は一つ一つの場所を丁寧に巡り、風を送りながら思い出を振り返った。
バスケットボールのコートでは、多くの子供たちが汗を流しながら練習していた日々を思い出す。ボールがリングに当たる音や、シュートが決まったときの歓声が耳に残っていた。扇風機は、その記憶に包まれながら風を送り、床のホコリを巻き上げた。
次に、バレーボールのネットの前に立ち止まった。ここでは毎週末に地元のチームが試合をしていた。熱い試合が繰り広げられ、プレーヤーたちの真剣な表情が思い浮かぶ。扇風機は、彼らを少しでも涼しくしようと全力で風を送り続けた。
ランニングトラックの周りを走ると、昔ここでトレーニングをした選手たちの姿が見えるような気がした。汗を流しながら走る彼らの姿は、扇風機にとって誇りであり、喜びだった。「彼らのためにもっと頑張ろう」と扇風機は思い、さらに勢いよく風を送った。
扇風機が体育館内を縦横無尽に走り回る姿は、まるで風の精霊が舞っているかのようだった。その風は、体育館の隅々まで行き渡り、古い建物の中に新しい生命を吹き込んだ。窓から見える月明かりが、扇風機の動きを優しく照らしていた。
夜が更けると、扇風機はゆっくりと動きを止め、元の場所に戻った。体育館内の空気は一新され、翌朝に備えて静けさが戻った。扇風機は、また次の夜に動き出す日を楽しみにしていた。なぜなら、体育館は彼の家であり、風を送ることが彼の使命だったからだ。
この古い扇風機が動き続ける限り、体育館の空気は常に新鮮であり、風の精霊は永遠に舞い続けるだろう。誰もその秘密を知らないまま、扇風機は今日も静かに待ち続けている。風が再び吹き込むその瞬間を。
扇風機 レンタル 体育館