理由あって、少し前からメーカーの生産技術部で働いている。


製造業の3本柱である、Q(Qualigy:品質)、C(Cost:コスト)、D(Delivery:納期)の内、生産技術の責務はC:コストの業務責任を負う部署だ(一般的に、製造業においては、それぞれ、Q:品質管理部、C:生産技術部、D:製造部 の組織を有する)。


業務内容は『コスト』に主観を置いているため、活動の成果物が経営に直結し、社内のあらゆる部署(技術部、品質管理部、製造部、生産管理部)との摺り合せや調整が求められる部署でもある。


ちなみに会計学の一分野である原価計算(コスト)に基いて生産技術の業務を見てみると、次のそれぞれの項目において合理性を追求し、コストダウンを行う部署である;


・直接材料費

  - 素材費

  - 買入部品費


・直接労務費

  - 各製造過程における工程(工賃)


・直接経費

  - 外注加工費

  - 特許権使用料


・製造間接費

  - 消耗品費(軍手、作業服、ウエス、洗剤、洗浄溶剤、油、工具、台車)


・間接労務費

  - 給料、賞与、退職金引当金、健康保険や年金


・間接経費

  - 減価償却費、

  - 保険(主に建物や機械装置など)

  - 修繕費

  - 光熱費(電気やガスなど)



具体的には、


 ・原料、部品の代替品検討による原価低減(直接材料費の低減)


 ・長在品や製品規格外品の処置、検討(仕掛品への転用)


 ・工程削減による原価低減(直接労務費の低減)


 ・初期流動の管理と量産時の管理法の立案


などである。


なお、初期流動とは、新規製品立ち上げ時(L/O、Line Off)に発生する様々な不具合現象が現れるため、特別な管理方法のことを指す。新製品立ち上げ時には、予期しない様々な不具合(ヒューマンエラーも含む)が発生するため、工程の安定している通常の管理方法とは異なる管理をする。


例えば、

 ・全数検査(あるいは抜き取り検査の頻度を上げる)、

 ・工具や副資材の交換時期を早める

 ・製品規格の設定範囲を狭くする(標準偏差(σ:シグマ)の管理)


などである。


なお、統計学における標準偏差(σ)を用いて、製品の品質規格範囲を決定する手法として一般的だ(ある製品の、ある項目は、正規分布に従うもととし、標準偏差の6倍となる確率は、100万分の3.4。シックス・シグマと呼ばれる品質管理手法もあるものの、標準偏差の整数値は、その製品の特性によって異なる値を設定し、社内規格として運用することが一般的だ)。


営業時代と比べて情報の量とスピードは格段に少なくまた遅いが、一方で製造業の奥深さを感じる貴重な経験だ。この経験を糧として、つぎつぎに新しい事業を創造していきたいと思う。


※原価計算 岡本清著 国元書房 ISBN4-7658-1007-0 C2034 P7000E