とはいえスコアを達成できなくてもボタン一つでリトライできるので、やり直しは気軽だ。しかもプレイごとに新しいジョーカーが使えるようになったり、新しいデッキ(最初から絵札がない、カードを場に出せる回数が少ない代わりにジョーカーが多く持てる)がアンロックされたりするので、ついついもう1回やりたくなってしまう。短ければ数分で1プレイが終わるし、長くても大抵20~30分だ。


 ……そう、ここまでの説明でお察しの通り、このゲームは中毒性が尋常じゃない。手札を引くとき、ジョーカーや惑星カードを選ぶとき、それを組み合わせて作ったデッキが想定通りの効果を発揮したとき。あらゆる行動が“ガチャ”になっている。演出も軽快かつちょっとサイケで、ストレスがないのでクリックやボタンを押す手が止まらない。脳をめちゃめちゃにハックされている自覚があるにもかかわらず、プレイが止められないのだ。


 SNSでも同様の声が多く見られる。ゲーム実況動画では頻繁に「中毒」という見出しが用いられているし、Xでは「ギャンブルにハマる人の気持ちが分かった気がする」といった意見もあった。筆者もおおむね同意見だ。ちょっと試してみようかなと思ったら10時間たっていたが、あと数十時間は余裕で遊べると思う。より難易度を高くもできるようなので、遊びつくそうと思ったらずっと遊べるだろう。


●ジャンルを開拓したパイオニア……というわけではない


 ただ、Balatroのゲームシステム自体は、実はそこまで目新しいものでもない。プレイごとに報酬を手に入れ、デッキやキャラクターを強化してクリアを目指すゲームは「ローグライクデッキ構築」「ローグライク系デッキビルダー」などと呼ばれ、インディーゲームや海外ゲームを好むゲーマーを中心に人気ジャンルになっている。


 「デッキ構築(デッキビルダー)」はその名の通り、ローグライクは「ローグみたいなゲーム」の意だ。最初期のコンピュータゲーム「ローグ」の要素を持つことを指す。定義はいろいろあるが、とりあえずは「何度もゲームオーバーになっては戦略を覚えるリプレイ性がある」「ランダム性があって何度も遊べる」要素があるという理解でいい。