蛇道
寒い日が続く。手に取った無機物は冷たく、神経の底まで肌の熱を奪い取る。だから嫌いなのだ、金属は。やはり有機物はいい。生命の源から溢れ出る温かさを感じさせ、4本の手足から成る無限大の組み合わせが、興奮と閃きを追求させる。あぁ早く実験がしたい。つんと鼻のつく有機溶媒の匂いと、合成の達成感、アッセイの結果をまとめ、考察する時間、次の実験計画の設計、ワクワク感を味わいたい。 2025年は私にとってどのような年になるのだろうか、期待と不安が入り混じる金曜日の夜だ。奇数年といえど5の倍数であるが故、キリのいい年である。大学受験数学の問題としては使えないだろう。去年は閏年、今年は何の年か。 今年は本をたくさん読もう、抱負として掲げてみる。アガサクリティー、コナンドイル、ゲーテなど読みたい。心に深く沈むような物語、ヘッセのような作家を探そう。童話や神話を読み込もう、本棚いっぱいになるまで。巨匠の伝記を読んでみても良い。偉人と会話しよう。 科学的知見を養おう。疎い、疎すぎる。私の知識では世界の0.1%も理解できていない。1%の解像度まで視点を広げてみよう。生命科学だけでなく、今見ている現象の本質まで。世俗的なことはどうでもいい。気になったことは都度都度調べてみよう。 感性を養おう。いわゆる教養というやつである。知識の習得ではない、道徳を育てるのである。そこらの自己啓発本や教養本を読むことは避けたい。あれは個々人の自慢話なのだから。 研究テーマを見つけよう。現状数10テーマを考えたが、形になるのはこのうち1,2個か。具体性を持って仕事に落とし込もう。そして部下を巻き込み、研究を進めてみよう。やることが多くなりそうだ。頭の暴走状態を保ちつつ、調和的態度で今年を過ごそう。