私が投資に全力で取り組む理由を説明したい。その理由は米国である。世界唯一の超大国である。しかも、「衰えた」といわれるが、最近は国力を回復している兆しがいくつもある。その米国は脅威と見なす国は徹底的に潰しにくる。脅威と見なされた戦前の日本は戦争に追いやられ、米国はソビエトと手を組んでまで日本を叩きのめした。そして、今度はソビエト脅威と見なすと、戦前・戦中敵だった日本やドイツ、共産国の中国とも組んで崩壊に追い込んだ。

 

1980年代になると、西側に対峙していたソビエトを盟主とする東側諸国が衰退してゆき、米国にとってソビエトはもはや脅威ではなくなっていた。そうした状況下で、日本は世界第GDPを誇るまで経済成長を続け、対米貿易は10年間以上も黒字を続けていた。ジャパン・アズ・ナンバーワンという書籍がベストセラーになるなど「驚嘆すべき成功を続ける日本経済」への関心が集まった。米国は日本を脅威とみなすようになり、ジャパン・ッシングが行われた。

 

198522日の日本米国英国、フランス、西ドイツか国蔵相中央銀行総裁が米ニューヨークにあるプラザホテルで各国の協調介入によってドル高是正をはかることなどが合意された。ドル高・円安から円高への契機となった。合意前ドル230円台のレートが、1987年末にはドル120円台のレートで取引されるようになった。日本政府は低金利政策などによって景気を下支えしようとしたが、投機が加速され、1980年代末に向けてバブル期を迎えた。

 

そして、1990代初めバブルが崩壊した。そうした中でも為替レートが見直されることはなく、1995年4月19日に1ドル79円75銭というそれまでの最高値を更新した。以降、日本はみるみる衰退し、失われた30年に突入する。そして、米国は国力を失った日本に興味をなくし、経済成長が著しい中国を取り込もうとするようになった。1998年に当時のクリントン大統領が訪中したが、同盟国である日本に立ち寄らずに帰国するというジャパン・ッシングが始まった。

 

これは第二次安倍内閣が発足した時期も続いていた。2013年2月22日に安倍首相が訪米してオバマ大統領と会談した際も晩餐会は開かれず、昼食会が行われただけであったし、日米共同記者会見なかった。また、この年12月に安倍首相が靖国神社を参拝すると、米国政府は日本に対して「米国は失望している。(安倍)首相が過去への反省と平和に対する責任の再確認を表明するか注視している」と、まるで中国の同盟国のようなコメントを出した。

 

風向きが変わったのが20151225中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)の発足だった。最も緊密な同盟国であるはずの英国が米国の制止を振り切り、AIIBへの参加を決めた。その後、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、イスラエルなども続々と参加を表明し、米国に衝撃を与えた。米国はの時、真の敵が中国であることを認識し、「中国打倒」を決意した。2018年10月4日、当時のペンス大統領が「中国との冷戦」を宣言した。

 

米国が中国を封じ込めるためにはアジアにおける最大の大国である日本との協力が不可欠であることは述べるまでもない。また、日本には役割を担う十分な能力がある。そして、米政府は自国経済から中国のデカップリング(経済的切り離し)をする方針を鮮明にしつまり、米国にとって、日本は経済的な脅威国から、戦略的なパートナーに立場が変わったことを意味する。円安はデメリットもあるが、相対的にメリットの方が多い。これは米国が容認しているとしか思えない。

 

中国の国家外為管理局SAFE)によれば、2023年の中国へのネットの対内直接投資(流入から撤退などの流出を差し引いた値)は前年比で81.7%減の330億ドルなった。実に、ピークだった2021年からは10分の以下となってしまったのだ。これは中国政府が改正反スパイ法の施行など、外資企業を警戒させる自らから墓穴を掘ってしまった側面もないではないが、米国が主導している西側諸国による中国とのデカップリングが奏功している結果ともいえるだろう。


中国から逃げ出した資金が全部日本に来るとは言わないが、その一部は日本に向かうことは間違いがなく、日本の経済に好影響をもたらすはずだ。例えば、半導体の受託生産で世界最大手の台湾企業「TSMC」が熊本県菊陽町に日本では初めて巨大な工場を完成させた。その存在感は黒船に例えられるほどで、地元への経済波及効果は凄まじいものがある。こうした日本への直接投資は増えるだろう。事実、私のところに千歳で工場用地の引き合いが来ている。

 

そして、日本株の実力である。2024日経平均株価が019023銭で終え、史上初の万円台に乗せた。これをバブル期と同列に語る馬鹿者がいる。しかし、株価が割安か割高かを判断するための指標であるPERは、バブル期は60.9倍だったが、現在は16.1に過ぎない。つまり、日本企業は筋肉質になり、米国は日本が強くなることを容認し、日本に向かう資金が増え、日本企業の業績が上向いた。これが私の投資に全力を賭ける動機だ。