スザーン・バーバー
英・イングランド東部のエセックス在住したスザーン・バーバー（２８）の不倫相手は夫マイケル・バーバーの無二の親友であるリチャード・コリンズだった。１９８１年５月のとある日、釣りから少し早めに帰宅したマイケルは、ベッドの中で裸で抱き合う妻とリチャードに出くわした。おそらく世の中の夫にとって最も眼にしたくない光景だろう。マイケルは怒り、その怒りに任せてスザーンのほっぺたにビンタを喰らわし、リチャードを裸のまま家から叩き出した。
夫婦の会話がないままに一夜が明けて、マイケルは仕事に出かけた。懲りないスザーンは再びリチャードを自宅に招き入れ、昨日の続きを済ませると、謀議を始めた。議題はマイケルの殺害だった。帰宅したマイケルは妻の手料理を口に運んだ。パラコート入りのミートパイである。直ぐに具合が悪くなり、救急車で運ばれた。肺炎に似た症状で「グッドパスチャー症候群」と聞きなれない病と診断された。そして、１週間苦しんだ末に死亡した。
夫の死を悼むことも、喪に服することもなく間男であるリチャードと同棲を始めたスーザンであったが、なぜか物足りなさを感じていた。つまり以前は不倫だったから燃えたのであった。スザーンは直ぐに『そういう状況でなければリチャードなどときめく相手ではなかった』と答えを見つけた。彼女は、トラック運転手が愛用するＣＢ無線で愛人を募集し始めた。コールサインは「ニンフォ（色情狂）」だった。彼女は不特定多数の男性に連絡を求めた。
一方、マイケルの検視に当たったデヴィッド・エヴァンスは除草剤の痕を発見していた。詳しく調べてもらうためにサンプルを取り、国立の試験局に発送。ところが、いつまで経っても結果報告がなかった。しびれを切らしてエヴァンスが回答を求めると、試験局から、「除草剤の成分は検出されなかった」との検査結果が報告された。実は試験局でサンプルを紛失してしまい、それを誤魔化すために出鱈目な報告をしていたことが後に発覚する。
試験局職員のうっかりミスにより『夫殺しの』罪を逃れたかに思われたスーザンは毎晩のように男を自宅に引き入れ、情事を楽しんでいた。ところが、彼女の性癖はエスカレートし、自分の性交の模様をＣＢ無線で中継するようになっていた。当然、無線が届く地元では『淫乱の変態女』として有名になっていた。一方、捜査当局は諦めることなく地道に調べを進めており、翌年４月になってようやくスーザンを逮捕した。判決は終身刑だった。