ローレンス・ビッテイカー

 

ローレンス・ビッテイカーは背が低く小柄で愛嬌がある。母性本能をくすぐるタイプで女性にモテた。幼い頃に養子に出された彼のIQは138もあったという。しかし、それを生かすことなく自動車泥棒で逮捕されたのが19歳の時だ。以後、シャバと刑務所を何度も行き来していた。最後の服役でロイ・ノリスと出会ったことがビッテイカーの転機となった。強姦の常習犯たるノリスはビッテイカーにその具合の良さを滔々と語った。

 

ロイ・ノリス

 

意気投合したふたりは釈放後に共同でバンを買ってガールハントに繰り出したのである。ちなみに、彼らはそのバンを「マーダー・マック」と名付けていたという。つまり、彼らは最初から被害者を殺す気満々だったのだ。判明している最初の犠牲者は16歳のシンディ・シェイファーだった。ふたりは1979年6月24日、ロスのレドンド・ビーチ付近で彼女を車に引きずり込んだ。彼らは口をテープで塞ぎ、手足を縛り上げた。

 

そして、郊外の山中まで車を飛ばして、シンディ繰り返し犯した後、針金のハンガーで首を締めて殺害したのである。締める際にはペンチを用いたという。徐々に締め上げることで殺害を長引かせていたことが窺える。彼らは明らかに殺しを楽しんでいたのである。真性のサディスト。そして、彼女の遺体をシャワー・カーテンに包み、峡谷に遺棄した。これだけのものを用意していたのだから、極めて計画的な犯行だった

 

次の犠牲者アンドレア・ホール(18)であるが、この度は彼女にも非があるとわざるを得ない。アンドレアビッテイカーの誘いに応じて自ら車に乗り込んでしまったのだ。2週間後の7月8日のことである。ビッテイカーは彼女に微笑みながら「後ろにクーラーが積んであるんだ。何か飲み物を取って来てくれないか」話しかけた。彼女が後ろに乗り込むや否や、隠れていたノリスが飛びかかった。その後は前回と同じだった。

 

但し、前回のシンディ場合とは殺害方法が異なった。アイスピックを彼女の耳に突き立てることで殺害したのだ。なんとも、聞いただけで胸糞の悪い酷い殺し方である。その後の取り調べにおけるノリスの証言によれば、突き立てたのはビッテイカーだという。ノリスがビールを取りに行っている間に突き立てたというのだ。だとすれば、ノリスは殺しには余り興味がなかったのだろう。むしろビッテイカーの方が殺しを楽しんでいたようだ。

 

9月3日には2人の少女が同時に襲われた。ジャッキー・ギリアム(15)とリー・ランプ(13)である。彼女たちもまたビッテイカーの誘いに応じて自ら車に乗り込んでしまった。2日に渡って犯された挙げ句、件のハンガーで拷問された後に殺害されたのである。ジャッキーはアイスピックで、リーはスレッジハンマーで殺害された。岬に遺棄されたジャッキーの耳にはアイスピックが刺さったままだったという。この殺害模様は録音されていた。   

 

9月30日にはシャーリー・サンダースが誘拐されたが、幸いにも彼女は逃げ出すことに成功している。しかし、彼女は犯されたトラウマからか、犯人を特定することは出来なかった。また、車のナンバーも憶えていなかった。そのために更なる犠牲者が出てしまった。10月31日にはリネット・レッドフォード(16)が誘拐された。やはり犯された後に、拷問された挙げ句にハンガーで絞め殺された。この件も録音されていたという。

 

今回は大胆不敵にも、彼女の遺体をとある家の庭に放置した。理由はマスコミや市民の反応を知りたかったからだという。ふたりの逮捕は呆気ないものだった。ノリスが犯行の一部始終を囚人仲間のジミー・ダルトンに自慢げに打ち明けていたのだ。ダルトンはどうせ大法螺だと取り合わなかったが、リネットの遺体が発見されるや蒼醒めた「あの野郎の話は本当だった!」  そして、弁護士を通じて警察に通報したのである。

 

逮捕されたノリスは司法取引に応じて相棒であるビッテイカーを売った。そして、「主犯はビッテイカーだと主張した司法取引に応じノリスは終身刑になり、ビッテイカーは死刑判決を言い渡された。だが、ビッテイカーは刑を執行されることなく、2019年11月13日に自然死した。ノリスも2020年2月24日、獄中死した。ビッテイカーは死亡するまで、「プリズン・グルービー」から愛されて、ファンレターを読む毎日だった