「警察庁広域重要指定事件」と呼ばれる事件がある。これは全国の警察機構が協力体制を取り、捜査に当たる事件を指す。主に被害者が都道府県をまたがって存在し、かつ凶悪犯罪と見なされた際に指定される。これまで24件が「警察庁広域重要指定事件」に指定されているが、中でも少年犯罪は件あり、そのうちの件が1967年に発生した混血少年連続殺人事件である。

最初に殺害されたのは19671213日、愛知県豊橋市に住んでいた当時24歳の主婦であった安藤和子さんだった被害者の主婦の死体は風呂場で発見され、下半身がむき出しになっていたことから、性的暴行を加えられ溺死させられたものとみられた。第二の事件は同年1228日、千葉県我孫子市で当時28歳の主婦だった渡辺淑子さんが細いひもで縛られ、殺されていた。

 

第三の事件は年が明けて196816日に山梨県甲府市の住宅街で発生。被害者は当時25歳の独身女性の渡辺喜美さんで、アイロンのコードで首を縛られ、さらに床には血の付いたソーセージやキュウリが転がり、局部に突っ込んだ痕跡があったという。これら愛知・千葉・山梨と県で発生した女性連続殺人事件は手口がほぼ同じということもあって警察は同一犯人と断定した

 

犯行現場近くには必ず20歳前後の長身の男性の姿が目撃されていたことから、警察は犯人の特定を進めた結果、柏市で容疑者の16歳少年を逮捕した。少年は日本に駐留していたアメリカの黒人兵の父親と日本女性のハーフで、まもなく父親は朝鮮戦争で戦死したまた母親は別のアメリカ兵と結婚して、彼を祖父母に預けてアメリカに渡ってしまい、彼は天涯孤独の身となってしまった。
 

学校ではハーフゆえの差別を受け、その鬱憤を晴らすかのように家庭内暴力がひどくなっていく中、店にある空気銃を盗もうとして逮捕された。家庭裁判所で教護院である全寮制の中学校に送られ、やがて自動車修理工に就職する。だが無断欠勤の連続で、ある日を境に放浪生活を始める。カネに困ると窃盗や強盗をはたらき、やがて若い女性を性的暴行目的で狙うようになったという。

 

少年は逮捕後、30件に及ぶ窃盗や、窃盗未遂、住居侵入、強盗強姦、強盗殺人で起訴された。複数の強盗殺人の累犯だが、少年法51項で犯行時18歳未満の場合被告人に死刑を適用することは禁止されており、検察は上限になる無期懲役を求刑した。1972年9月9日に、千葉地裁は少年に無期懲役を宣告し、被告が控訴しなかったことからそのまま刑が確定している

 

宝島社の取材により、元少年の消息が判明したことがる。犯罪や闇金融関連のジャーナリストである安土茂が元少年の親代わりとなって面倒を見ていることが明らかとなった。元少年は38歳で仮出所してから現在まで、定職について真面目に働いており、被害者らへの罪滅ぼしの意味を込めて生涯独身を通すと誓っていることが初めて一般に公表された。彼が存命であれば現在71である。